公益社団法人北海道観光振興機構は14日、札幌市中央区の東京ドームホテル札幌で『北海道観光イノベーションに向けた提言』と題した報告会を開催、約200人が参加した。都府県、海外の旅行者が北海道観光に期待することなどについてインターネット調査した結果や都府県で成功している観光の先進事例をヒアリング調査した結果などが報告され、『新たな北海道の旅スタイルについて』をテーマにパネルディスカッションも行われた。(写真は、活発な意見が交わされたパネルディスカッション)
報告会の冒頭、近藤龍夫会長が挨拶、「1年半前に観光機構会長に就いてからこれまでの活動状況を調べたが、他の都府県との観光に関する比較作業が欠落していることを痛感した。津軽海峡の向こうはどうなっているのか、どう観光振興を進めているのかをしっかり調べることが原点と考えてこの事業を実施した」と述べたうえで、「北海道は観光資源大国。しかしこの資源を使い切っていない。これを活かして発展する道は残されている。今回の調査を踏まえて観光資源大国から観光立国北海道を目指す飛躍へ繋がっていけばと願う」と締めくくった。
調査の結果報告が行われた後で『北海道観光イノベーションに向けての5つの提言』として①新たなブランド構築②マーケティングの高度化③人材育成・確保④インフラ⑤組織戦略のそれぞれについて提言がなされた。
続くパネルディスカッションには、北海道宿屋塾の柳森利宜代表、FIT(個人旅行)推進協議会の若狭幸司会長(ワカサリゾート専務)、北海道電力企画部阿部欣司調査役、JTB総合研究所の中根裕主席研究員が登壇、道観光振興機構広報グループ橋屋哲担当部長がコーディネーターを務めた。
柳森氏は、「これからのホテル旅館は明確なストーリーがあればお客を呼べる時代。地域と一緒になって各地域にあるホテル旅館の1部屋でも良いからオーガニックやエシカル(環境保全、社会貢献)というような新しいライフスタイル提案型の客室を作ればどうか。そうすることで多様化するニーズをキャッチできるのではないか」と訴えた。
若狭氏は、「テレビ番組の『ブラタモリ』や『モヤモヤさまぁ~ず』のような切り口の企画旅行があれば面白い。アイヌの人たちが、なぜこの地名を付けたのかを発信していくような企画旅行も楽しいだろう。また、サンマの解禁日を設けたり、イランカラプテカードを作ってFITを盛り上げるようなことも工夫すべきでは」と提案した。
阿部氏は、「平成の初めに道内のホテル旅館の多くは設備投資をしたが、間もなく更新時期を迎える。その機会を捉えて家業から企業へと観光イノベーションが必要だ」と話した。また、「静岡空港は早晩中国便が羽田、関空の発着枠拡大で少なくなることを見越して次の手を打っている。バランスの取れたインバウンド対応が必要。また、洞爺湖で花火を打ち上げてもアジア圏の観光客は喝采して喜ぶが、欧米圏の観光客は自然破壊と受け止める。そんな違いも考慮した対応が求められる」とした。
中根氏は、津別町を訪問したときの印象について報告、「あのマチには私が感じただけで3つの原石があった。1つは宿舎のロビーからキタキツネ、クロテンに餌をやることができたこと。2つは、横浜崎陽軒の経木の弁当箱は津別で作られていること。3つは、たい焼きならぬクマ焼き。たいの代わりにクマの形を作ってそこにあんこやクリームを入れたもの。いずれも観光資源になる原石」と紹介。「北海道にはまだまだ未開発の生活文化資源がある。これを伝えていくのは人。自信を持って自分たちの周りを見直し、言葉が通じなくても発信していくことが大切。原石はごろごろ転がっている」と話していた。