毎年12月になると、アークスの横山清社長は新年度を迎えるアークスのモットーを自ら毛筆でしたためる。昨年は『恐慌前夜』をキーワードにしたが、今年の核になる言葉として『創発の力』を選んだ。
毎年、練習もせずに一気に書いてしまうというが、2011年のモットーは写真にもあるように『熾せ創発の力 集中化差別化 低コストの追求で新時代の旗手となる。』
横山さんが解説する。
「創発という言葉は、複雑系の用語でベルギーのノーベル賞を受賞した化学者が創発現象で化学を解いたが、社会学的にもそういう現象がある。人間一人ひとりはおとなしくても、ある瞬間に大きな力を引き起こす。例えは悪いが、戦争にしても革命にしても“創発”の力が作用している。人間集団でああだ、こうだと動いているうちにパッと変わっていくことを“創発”と見てもいいのではないか」
横山さんは、さらに『おこせ』という動詞に『起こせ』ではなく『熾せ』を選んだ。熾せは、炭をおこす、火をおこすという意味。あえてこの動詞を選んだことについて「パッと変わった力が、燃えるように伝播していくことが必要だから」(横山さん)。
そう言った後で、横山さんは茶目っ気たっぷりに「簡単な言葉は難しく、難しい言葉は簡単にするのが、私流ということかな」と笑った。
昨年アークスグループ7社では新店2店(スーパーアークスエクスプレス、フクハラすずらん台店)、リニューアル6店(スーパーアークス桜町店、ラルズマート白鳥店、ラルズマート当別駅前店、ラルズマート16条店、ビッグハウス元江別店、ビッグハウスエクストラ)、新築移転1店(スーパーアークス月寒東店)を実施したが、今年はリニューアル投資があるものの新店は具体的には動いていない。ただ、苫小牧に1万坪の更地を保有しており様子を見ながら出店するかどうかを判断する。
また、新たな土地や物件取得について「現在も以前に比べたらそれほどの価格ではないが、年度末にかけて土地や物件の価格は半値近くに下がる可能性もある。手元の案件は全部凍結している」(横山さん)
さて、2011年の流通界はどうなるか、横山予想を最後に聞いた。
「この1年半の間、業界は利益も出ないカラ回りの営業をしてきた。食品スーパー業界は再編成のスピードがグンと上がるだろう。北海道はその典型になる」
(写真は、アークスの2011年のモットー、行動指針となる言葉を掲げる横山清社長)