丸井今井の民事再生申請からほぼ2年、最後まで残っていた旭川店が売却され、来年春ころには民事再生が終結する。申請代理人として三越伊勢丹への売却などを進めてきた橋本大川合同法律事務所の橋本昭夫弁護士に、終結を間近に控えた現在の心境を聞いた。
――最後まで残っていた旭川店の売却を終えての感想は。
橋本 我々の売却方針は、当初から『物販』であること、『直ちに』営業を再開することだった。極東証券が名乗りを上げていたが、最後の段階になって地元のハスコムが買い手として現れた。しかし、取り壊して建て替えるというのは、我々の売却方針と食い違ったし実効性のある空洞化対策とは言えなかった。高い値段を提示しても検討できないと判断していた。
旭川店を存続できなかったことで地域に迷惑をかけたため、『物販』『直ちに』の方針を決めて極東証券に売却できたのは、弁護士として社会的使命を果たせたと感じている。
――別除権者(担保権者)は、高い値段で売れたほうが配当が多くなって良かったのではないか。
橋本 我々の考えを話して『高くてもダメです』と主張し別除権者に納得してもらった。
――極東証券が名乗りを上げてから売買が成立する(12月10日)まで、かなりの時間を要したのはなぜか。
橋本 極東証券は不動産証券化の手法で、旭川店の購入資金を調達するため、館内の状態を精査して、どこをどう直すか、補修代金としていくら出すかを詳細に検討していた。旭川店は年数が経っているために現在の建築基準法と合致していないところもある。そのための手直しも必要で、ゼネコンとの二人三脚で調査していたために時間を要したということだ。ただ、それはセオリー通りのことだ。
――極東証券のテナント集めは順調に進んでいるのか。
橋本 報告は受けていないが、フロアーの小間割りをしているようだからある程度のテナントは決まっているのではないか。地下にはスーパーが入ることになると思う。
――旭川店の売却で民事再生は終結することになるが、今後の予定は。
橋本 旭川店の売却によって得た資金は抵当権者の配当になるために他の債権者への新たな配当財源にはならないが、昨年末に行った第一回配当は整理資金を確保した残余額から配当したために財源が残っている。また、第一回配当後に回収した債権もある。来年の春先にはこれらをまとめて最後配当を行い、札幌地裁から終結決定を受ける予定だ。
――丸井今井の民事再生は橋本弁護士にとってどういう経済事件だったか。
橋本 スケールといい社会的注目度といい、地域経済に与える影響が大きい民事再生案件だった。三越伊勢丹と高島屋が名乗りを上げたことで、三越伊勢丹は当初切り離す考えだった函館店を残す決断になった。2つのデパートが競り合ったことが結果的には良かったと思う。ただ、三越伊勢丹が旭川店を継続しないと判断したのは不思議だった。
本店と函館店が三越伊勢丹の子会社として再生できたので2勝1敗という見方もあるが、私は1敗とされる旭川店も物販施設として売却できたので3戦3勝だと思っている。
いずれにしても、丸井今井の民事再生は我々が蓄えてきた力の集大成だった。あれだけの再生が地元でできることを示せたのは、良かったと思っている。
(写真は、極東証券に売却され、物販店として来春に再スタートする丸井今井旧旭川店)