札幌証券取引所の開設60周年記念講演が11月18日に札証2階で開かれた。講師はJR東日本で社長、会長を務めた松田昌士さん(74)。『今、求められる経営者像』のテーマで講演した松田さんは、JALの再生問題にも言及した。
松田さんは、北見市出身で実父は札幌駅長を務めたこともある。北大大学院法学研究科を卒業した松田さんは迷うことなく国鉄入りし、分割民営化の時には経営企画部門を担当、改革七人衆の筆頭格として国鉄改革を断行。
分割後はJR東日本の常務、社長(平成5年6月~同12年6月)、会長(同12年6月~同18年6月)を歴任しその後は相談役として活動している。
講演では、JR時代の株売却で海外投資家へのIR活動として世界を回ったことやILO(国際労働機関)の委員としてスイスでの討議に参加したことなど、時折ジョークを交えながら話した。
長年の経営第一線にいたことから経営者として大事なこととして『運を大事にすること』『人の言うことを素直に聞かないこと』『自分の眼で見て確かめ、足を運ぶこと』――の3つを挙げ、「本当のことは何なのかを常に考えて、新しいものを自分で作ること。それには3年先を見ていくことが大切だ」と強調していた。
JAL問題については、会場からの質問に答えて言及したのだが、松田さんはJALの非常勤監査役を3年間務めた経験から次のように話した。《3年間の非常勤監査役時代は本当の情報と言うものが全く入ってこなかった。JALにはキャリアの46%が代議士の師弟や口利きによる縁故採用者で占められている。彼らは非常時には全く役に立たない。だから潰れても無関心》
会社更生法に基づく更正計画を東京地裁に申請中のJALは当初希望退職者1500人と見込んでいたものの、そこまでの退職者が出なかったためにパイロットや客室乗務員約250人を整理解雇することになったが、これについても松田さんは舌鋒鋭く批判を重ねた。《客室乗員にしてもパイロットにしても一人前になるのに10年間はかかる。彼らは全日空と全く遜色のない能力がある。数あわせでなぜクビを切るのか。お金の問題ならば全社員の給料を6割にすればよい。整理解雇などせず全体でお金を調整すべきだ》
国鉄改革を第一線で実践してきた松田さんがJAL再生に苦言を呈した格好。3年後のJALは、米国エアーラインの子会社という究極の見方も出ており、松田さんの苦言が正鵠を射ているかどうかは数年後に分かる。(写真は講演する松田昌士・JR東日本相談役)