JALの経営撤退に伴って、新しい経営体制の構築を進めている北海道エアシステム(HAC)は、事業ブラン策定の目途としている10月末まで残すところ2週間を切った。しかし、新たな主要株主となる札幌市との間で株価の算定や増資額について合意に達しておらず、事業プラン策定が再びずれ込むのは必至の情勢になっている。
HACはJAL51%、道49%を出資しているが、JALは会社更生法申請に伴って出資比率を連結決算の対象にならない15%以下に出資比率を縮小することにしている。これに伴って、道は新たな株主として札幌市や他の自治体、経済界を想定。札幌市の出資を促す目的で丘珠空港への集約を模索している。
ただ、道のHAC新体制への事業立案に対する情報開示が不十分として、札幌市は7月下旬に上田文雄市長名による異例の文書差し入れを行い、道と札幌市の間に疑心暗鬼が広がった。
その後、道の情報開示は改善され、現在は週一回のペースで協議が進んでいる。
10月14日に行われた札幌市の北海道新幹線・丘珠空港調査特別委員会では、これまでの道との協議の内容や今後の予定について市から報告されたが、本郷俊夫市議(中央区・公明党)は、「道によるHACの事業プラン策定は10月中に行うのはなかなか無理があるのではないか。道は3定例会にHAC事業プランを提出する予定と聞いていたが、4定例会にずれ込んでいる。HAC新体制の移行時期にも影響するのではないか」と質問。
答弁した小笠原倫生・市民まちづくり局空港担当部長は、「大変厳しいが引き続き協議していく」と事実上、10月中での事業プラン策定は先延ばしされることを示唆した。
ネックになっているのは、道が考えているHACの新しい資本政策に札幌市の了解が得られていないこと。出資比率もさることながら減資の後に行われる増資の額や第三者割り当てで引き受ける株価についても道と札幌市の間にある溝を埋め切れていないからだ。
2週間で、会社経営の根幹となる資本政策で道と札幌市の溝が埋まるとは考えにくく10月中の事業プラン策定、ひいては今年度中のHAC新体制移行にも黄信号が灯り出した。