加森観光が、健康・医療ツーリズムをリゾート事業の柱にする方針を固めた。同社はこれまで経営難に陥った全国各地のリゾート施設やリゾート地の再生を目的に運営を引き受ける、言わばリゾートの再生請負人だった。
しかし、国内景気の低迷で観光客が減少傾向にあることやスキー客の構造的な減少など、リゾート・観光施設に新たな付加価値をつけなければ集客は伸びないと判断したためだ。
同社が健康・医療ツーリズムの実験場所に選んだのはルスツリゾート。ゴルフ、スキーなどバブル期にはリゾートの代名詞とも言われるほど全国的に有名になり、ご他聞に漏れずルスツタワーと呼ばれる大規模集客施設の建設、リゾート会員権の販売とバブル・リゾートを謳歌していた。
同じようにバブルに踊ったリゾート企業が、バブル後の景気低迷や金融危機で相次ぎ脱落していったが、加森観光は破綻した長銀メーンのリゾート企業でありながら生き延びてきた。
ルスツリゾートは加森観光が、登別クマ牧場から脱皮する原点となった事業。ここで新たな取り組みをすることによって観光事業を再構築しようというものだ。
中心軸にするのが健康・医療ツーリズムでとりわけアンチエイジングをキーワードに付加価値リゾートを追求することにしている。
10月9日と10日には、アンチエイジングの世界的な権威である京都府立医大の吉川敏一教授の講演やアンチエイジング料理の試食、運動プログラムの実践などを盛り込んだ宿泊プランを打ち出した。「吉川教授の講演には400人が参加するほど盛況だった。アンチエイジングは新しいリゾートのあり方として期待できる」と加森公人社長。
また、札幌国際大学のスポーツ人間学部と観光学部との連携協定も締結、健康分野でのコラボレーションによって新たな北海道観光像を探し出す考えだ。
「アンチエイジングという発想は私にはなかった。アンチエイジングを提案した長男の考えに私も納得したので、新たなリゾートの核に据えていくつもりだ」と加森社長は言う。アンチエイジングをキーワードにしたリゾートの新生は、長男への禅譲路線を築くための試金石の役割もあるようだ。