地域金融のリード役である信用金庫に収益モデルの行き詰まり感が高まっている。順調に集まる預金に対して、伸びるどころかマイナスを続ける貸出し。集まってきた預金を貸出しに回すには限度があるため、余った預金は運用に振り向けざるを得ない。結果、運用のリスクは高まり、ジワジワというより一気に赤字という事態にもなりかねないからだ。
貸出しでの不良債権は、引当金や個別性があるため一気に増えることは少ないが、こと運用に関しては株式相場の下落や国債の価格下落で一度にガクンと下がることがある。平たく言えば、不良債権は下り坂、運用は道の途中が突然切れて崖のようになっているようなもの。しかも、平坦な道に突然現れる崖は予測が付かない。気が付いたら、手遅れで真っ逆さまに赤字の海に転落ということだって有り得るのだ。
そもそも、信用金庫の役割は、地域に密着した協同組織の金融機関として地域経済を支えることにある。地方銀行よりもきめ細かく地域ニーズに応える地縁金融で、人の顔が見えるのが存在意義と言っても良い。
道内にある23信金全体の2010年3月期の決算を見ると、預金は個人を中心に順調に伸び、前期比2・5%増の6兆2477億円。一方、貸出しは主力の中小零細企業の低迷から同2・4%減の3兆1002億円にとどまった。貸出金が減少に転じたのは、01年3月期以来、9期ぶりのことだ。
もっと深刻なのは、集めた預金をどれだけ貸出しに回しているかを示す預貸率という指標が、49・62%で、統計を取り始めて以来初めて50%を切った。
つまり、集めた預金の半分以下しか貸出しに使っていないということで、後の半分は運用に振り向けているということ。これでは、収益源である貸出し金利収入だって減る一方。信金収益モデルの行き詰まりは北海道で顕著になっているという訳。
では、今後信金はどうなるのか。北洋銀行の横内龍三頭取は、「いくつかの信金がグループ化して、いずれは地銀への転換を目指さざるを得ないのではないか。信金にはその道が残されている」と展望する。
横内頭取は、元日銀局長。マクロ経済には土地勘があり、信金の地銀化という洞察は一考に価する。
(写真は信金の総本山?である信金中央金庫の札幌支店が入っている北海道信金中央金庫ビル)