道内の食品スーパーは、ディスカウントを通り越して激安戦争に入っている。利益を見込めない価格まで低下しているものだから、スーパー各社にとって消耗戦。生き残りの鍵は、これまでに蓄積された体力=内部留保金がどれだけあるかということ。
消耗戦の結末は寡占化だ。一足早く激安戦争に見舞われたガソリンスタンドは、いたるところで閉鎖が相次ぎ、道内のあちこちで無残な姿を晒している。結果、大手資本が生き残る構図。食品スーパーもガソリンスタンドのような道筋を辿るのだろうか。
道内食品スーパーは、地場連合体のアークス、コープさっぽろ、大手資本のイオン系の3極がほぼ市場を押さえている。そんな狭間の中、どこのグループに属さない地場独立系として元気さが際立っているのが、フードDを展開している豊月だ。もともとは樺太から引き揚げてきた先代が芦別で始めたお菓子屋がルーツだ。社名の「豊月」は確かにお菓子のイメージを醸しだしている。
食品スーパーを始めたのは現社長で次男の豊岡憲治氏。昭和48年に苫小牧で1号店を開いたのが最初。
現在は、苫小牧を中心に千歳、恵庭、北広島、札幌で9店舗営業している。
豊月の平成22年1月期の貸借対照表を見ると内部留保の厚さに驚く。資産61億8400万円のうち純資産は26億8300万円。資本金1億円だから、内部留保金は25億8300万円にも及ぶ。当期の純利益は3億5800万円。
昭和48年以来、せっせと溜め込んだ内部留保が25億円になっているわけで、これだけあれば少々の赤字が続いても大丈夫という経営体質だといえそう。
フードDは、5~6年前からディスカウントのDをあまり強調せずに品質をアピールする「フードD食彩館」の店舗名をつけている。さらにここ2~3年は「Q&D」(クォリティ&ディスカウント)を消費者にアピールして単なる安売りではないことを印象付ける作戦に出ている。
業界内では、「今は価格の戦争をしているのに品質重視ではお客を呼べない」という声もあって、フードDは苦しくなっているという見方もある。
少なくても昨年までフードDは順調に利益を積み上げてきた。今年の激安戦争の影響をどの程度受けるのか、そして内部留保の取り崩しが始まるのかどうか、フードDの財務体質の変化は消耗戦の実態を表すことになりそうだ。
(写真は秋口にオープンするフードD大麻店の建設現場。7月下旬に撮影)