サッポロドラッグストアーの出店攻勢が続いている。前期(2014年2月期)の11店舗を超えて今期は16店舗の新規出店を計画、2020年までに300店舗体制を構築することにしている(今期末は156店舗を予定)。今年7月22日には東証1部にスピード指定替え、道内を代表する企業へ仲間入りした。富山睦浩社長に今後の成長戦略などについてインタビューした。(写真は、インタビューに答える富山社長)
――東証一部上場は以前から計画していたのですか。
富山 2003年に店頭登録し04年にジャスダック上場したが、その次は東証ということで13年12月に2部に上場しそれから7ヵ月間で1部に指定替えした。本来、2部から1部に指定替えするには1年以上の期間を置かなければならないが、東証と大証が合併した関係で基準を満たしていれば半年で昇格できる措置が取られた。それなら、ということで申請しスピード指定替えになった。
――そういう事情があったにしても半年強で指定替えはあまり例がないですね。1部上場の効果はどんな面で出ていますか。
富山 知名度があがりダイレクトメールが多くなった(笑)。お客さまを含めてメーカーや卸も見る目が変わってきたし、銀行も違ってくるのではないか。東証1部と2部では金融機関の格付けも変わり金利設定にも違いがあるようだ。あとは採用面。優秀な人材がだんだん採用しづらくなっているので1部上場は有利になる。中でも一番喜んだのは社員。社員の親が「おまえの会社は東証1部になったのか」と喜んでくれたという話を良く聞いた。社員のモチベーションがあがった半面、こういった時代だ から個人情報の問題やコンプライアンスをきちんとしていかなければならない。
――創業42年で東証1部までのぼりつめたことに率直にどう思いますか。
富山 何より自分がびっくりしている。創業当初は東証1部になるなんて思ってもいなかった。北海道の企業で1部に上場しているのは13社あるそうで、そのうち北海道だけで事業展開している会社は当社だけだそうだ。中身はほかの東証1部の会社と比べてまだまだなのでこれからステップアップしていかなければならない。
――ステップアップするための新機軸は何でしょう。
富山 ひとつはカード戦略だ。今まではサッポロドラッグストアーのカードで約180万人のホルダーがいたが、これを基盤にして北海道のカードにしていこうということで『エゾカ』を出した。北海道の様々な企業を巻き込んで250万人を目標に北海道のカードを作っていこうというのがひとつのステップだ。
――『エゾカ』はカラオケの「タカハシ」や餃子の「みよしの」なども参加していますね。
富山 ポイントの仕組みを構築するには大きな投資が必要だが、『エゾカ』を利用すればそれほど投資がかからない。2、3店の小規模商店でも1店の店でも加入することが可能で商店街での導入例もある。全国規模のポイントカードは小さな規模の店舗ではなかなか入れないが、エゾカは安く入れるメリットがある。
――地域カードという位置づけですね。
富山 市町村と一緒にイベントを行うなど地域密着型カードと位置づけている。『エゾクラブマガシン』というフリーマカジンも作っていて2号目を出したところだ。これには割引率の高いクーポンも付いている。ただ、『エゾカ』が道内に定着するまでに2~3年は必要だろう。
――販促にもなるし地域振興にもなりますね。加盟店が増えていけば道産子カードと言うこともできますね。その中心的役割をサツドラがするということですか。
富山 『エゾカ』に関して、ブルーチップ(東京都)と共同出資でリージョナルマーケティングという会社をつくっており、そこが運営していく形態にしている。こういう事業を通してドラッグストアの差別化を進めていきたい。
――ところでドラッグストアは350坪のタイプがサツドラの標準フォーマットと位置づけられていますが、さらに新しいフォーマットを開発していく意向ですか。
富山 ドラッグストアにプラスして調剤室と整骨院を設置した450坪タイプの新フォーマット店舗を出していく考えだ。450坪のうち350坪がドラッグストアで調剤室や整骨院を15坪ずつ程度併設するもので、整骨院は東京のワイズケアという整骨院のフランチャイズ本部と提携、独立開業する整骨院をサポートしていく体制を取った。既に既存店の川沿店(札幌市南区)に整骨院を併設、9月にオープンした旭川永山店(旭川市)も整骨院併設の新店だ。
――ドラッグストアの新店は札幌や帯広、旭川など昨年から今年にかけて都市部への出店が多かったと思いますが、以前の利尻島のような地方の狭小マーケットへの出店はどうなりますか。
富山 建築費や運送費、電気料金も値上がりし我々の業界も厳しくなってきているが、地方への出店は来期以降に予定している。
――海外展開として日本ファシリテイ(札幌市)がマレーシアの現地デベロッパーと組んで今秋オープンする商業施設内に出店しますね。
富山 マレーシアのコタキナバルの商業施設は、日本ファシリティの対馬義彦社長の子息が現地の企業と組んで起こした会社が建設したもので、そこに30坪程度の化粧品専門の店舗をオープンさせる。対馬社長の子息は海外留学時代にマレーシアの財閥の子息と交流があった縁で現地会社を設立している。施設には当社以外にもタカハシがパン店を開き、北海道村と言えるような北海道専門店を100~200坪の規模で展開する予定と聞いている。
当社は、アンテナ的に出店して将来の海外展開に備えるための準備という位置づけだ。あくまでも道内をベースに出店を進めていくことにしており道外出店についても当面考えていない。
――今後の成長戦略として10年、20年先はドラッグオンリーでいくのか様々な付加価値をつけながら拡大していくのかどちらでしょうか。
富山 ドラッグストアを核にして付随するものをやっていくことになるだろう。本体のドラッグストアに関わることに取り組んでお客さまの来店頻度を高めていくことを重層化していきたいと考えている。(終わり)