北洋銀行が道内に関わりのある成長企業などに5%を超えて出資するイノベーションファンドの出資先企業懇談会が29日、札幌市中央区のホテルオークラ札幌で行われた。現在の出資先企業数は17社で同ファンドの出資額合計は3億1500万円。同ファンドの出資先企業のトップが一堂に会する懇談会は初めてで、経営者同士の横連携を活発化させイノベーションを深化させる狙いがあるようだ。(写真は、北洋イノベーションファンド出資先企業懇談会に集まった経営者)
金融機関は上場、非上場を問わず議決権のある株式の5%しか保有できない規制がある。しかし、技術力のある中小企業などでも平均的な資本金は2,3000万円で5%ルールの下ではわずか150万円程度しか出資できず企業の成長に必要な資金が回らない。
北洋銀行は石井純二頭取の肝煎りで、議決権のない優先株など種類株を保有することで5%を超えて出資できるイノベーションファンドを同頭取が就任した2012年4月に創設、「銀行界のタブーに全国で初めて挑戦することにした」(石井頭取)
懇談会には、1号案件である大根洗浄機など野菜の洗浄機、選別機などを製造販売する「エフ・イー」(旭川市)から17号案件になったエアコン1台で暖房と光熱費をカットできる省エネ・自然換気住宅設計の「パッシブホーム」(札幌市北区)
までのトップ17人が勢揃いした。
石井頭取は、「今、求められているのはバリューイノベーション、つまり新しい価値の創造。当行が出資している企業はまさにバリューイノベーションが優れているところばかり。金は出すけど口は出さないという姿勢で成長に必要な資金を積極的に供給、北海道経済活性化に貢献したい」と挨拶した。
来賓として出席した鈴木正俊北海道財務局長は、「ファンド自体がイノベーションだ」と語り、増山壽一北海道経済産業局長も「米国ではファンド創設者の名前を付けるのが一般的。米国流に言えばイノベーションファンドは石井ファンド。ここに集まった経営者たちはまさに石井ブラザーズの面々。北洋銀行は金を出すけど口は出さない姿勢とともに出資先企業や地域に活力、エネルギー、夢を与える役割を果たして欲しい」と述べた。
イノベーションファンドは、5億円の枠で始まったが現在も相当数の出資先候補があるため枠を使い切るのは確実。「さらに増額したい」(石井頭取)としており、ベンチャー企業やニッチ市場で活躍する技術系企業などの成長を後押ししそうだ。