室蘭港に10年ぶりにフェリーが戻ってきた。22日午後6時、岩手県宮古港発の川崎近海汽船の定期フェリー「シルバークイーン」(旅客定員600人、トラック69台、乗用車20台積載)がフェリーターミナルに着岸すると、集まった市民や関係者は喜びを爆発させた。東北と北海道を結ぶ物流や観光の新動脈に期待がかかる。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください
(写真は歓迎式典で談笑する青山剛・室蘭市長=左と山本正徳・宮古市長)
(写真は、入港する宮蘭航路の第一便)
室蘭港には、かつて八戸(青森県)や大洗(茨城県)など本州を結ぶ5航路があったが、徐々に苫小牧港にシフト。2008年の東日本フェリー青森便撤退で定期フェリーは姿を消した。
一度途絶えたら復活することが難しい時代の中で、岩手県初のフェリー航路が室蘭市と結ばれることになったのは、2020年度までに宮古を経由して八戸と仙台を結ぶ高速道「三陸沿岸道路」が全面開通するため。もう1つは、青函トンネルだ。北海道新幹線札幌延伸をにらんで貨物列車の青函トンネル通過が減便される可能性が高いため。加えて、片道10時間の航路はトラック運転手の働き方改革にもつながる。
北海道では、小樽港、苫小牧港、函館港から11便の定期フェリー便があり、室蘭と宮古を結ぶ宮蘭航路で12便になる。
この日午後5時半ころ、白鳥大橋をくぐった7005トン、全長134メートルのフェリーが夕陽に船体を輝かせて湾に入ってきた。カラー放水を浴びながらタグボートがフェリーの方向を変え、船尾を向けてターミナルに横付けされたのは午後6時。フェリーのデッキに並んだ大勢の乗客がしきりに手を振る姿が見えた。
(写真は、到着便のデッキで手を振る乗客たち)
フェリーターミナルは、差し込んでくる西日と相まって、集まった市民や関係者の熱気に包まれていた。歓迎式典で室蘭市の青山剛市長(40)は「この日を待っていた。やっぱりこの街にはフェリーが似合う。最高だ」と声を張り上げると、第一便に乗船してきた宮古市の山本正徳市長(62)も、「こんなにうれしい日はない。室蘭市と宮古市は兄弟のような関係になった」と応えた。
港に横付けされたフェリーの遠景には工場が並ぶ姿が見えた。工場夜景が観光コンテンツになっている室蘭市に、フェリーはどんな息吹を運んでくれるのだろうか。
(港に停泊しているフェリーの遠景に浮かぶ工場群=写真)