冬の夜を彩る「もう一つのホワイトイルミネーション」――電気工事業を行う中小事業者510社の協同組合である札幌電気工事業協同組合(札電協)青年部(47名)が、11日から16日までの6日間、札幌市内にある羊ヶ丘養護園や札幌育児園など5つの児童養護施設でイルミネーション&ライトアップを行っている。親の暴力や育児放棄などで入所している約400人の子供たちに楽しんでもらおうと始めたもので今年が3回目。立木に装飾された電飾の輝きやライトアップされた木々が、降り積もった雪の中で小宇宙の物語を編んでいる。(写真上段は興生学園のイルミネーション&ライトアップ、下段は左から古嶋清隆さん、岡田和也さん、伊藤寿教さん)
「社会に役立つようなボランティア活動をしよう」。札電協青年部で当時、事業委員長をしていた佐々木純氏のひと言がきっかけで始まったのがこのイルミネーション&ライトアップ。もともと個人的に児童養護施設にチャリティー募金の寄付をしていたという佐々木氏は「どうせやるなら市内にある5施設全部でやろう」と提案、中島公園にある日本庭園や円山動物園でボランティアのライトアップ経験があった青年部の面々も「子供たちを喜ばせたい」と賛同、日ごろの電気工事で培った技術を使い、「もう一つのホワイトイルミネーション」が産声をあげた。
札幌の街なみを幻想的に彩るホワイトイルミネーションの大通会場は、例年、年末に終了する。児童養護施設のイルミネーションは役割を終えた大通会場の器材の一部を借りて各施設に取り付けている。作業はすべて青年部のメンバーが仕事の合間を縫ってボランティアで行う。
当初は1回だけで終わるつもりだったが、子供たちの喜ぶ顔や活動を通じて心が触れ合うことに青年部のメンバーたちも共鳴、「続けてやりたい」という声が大勢を占め、今年で3回目を迎えた。今では年間の恒例行事として青年部の活動にしっかりと組み込まれている。
「続けることによって施設の子供たちとの交流も活発になってきました。今年は一緒にくまモンやふなっしーの雪像を作ったりしました。点灯式では、一人ひとりがお礼を言ってくれたり、本当に楽しみにしてくれているんだと実感します」(古嶋清隆青年部長・新工電気常務、39)
また、今年は各施設に仕事で使う高所作業車も出動、実際に子供たちを載せて上からの眺めを体験してもらう趣向も凝らした。各施設には零歳児から18歳までの子供たちが入所しているが、「夜の外出は引率する先生の数が少なくてほとんどできないそうです。多くの子供たちはホワイトイルミネーションを見たことがない。最近は施設の近所の人たちもとても楽しみにしてくれてやりがいがありますね」(岡田和也青年部事業委員長・岡田電気工事常務、34)
18歳になって施設を卒園した生徒が、昨年4月に札電協の会員会社に就職するなど思わぬ広がりも出ている。
ボランティア活動と言っても、そう簡単ではない。仕事や家庭、友人との付き合い――時間はいくらあっても足りないのでは?と水を向けると、「青年部の伝統と言うんでしょうか、それが当たり前という感覚ですから特に敷居が高いという思いはありませんね」と古嶋さん。
時としてボランティア活動は社業の延長となってしまう面もあるが、青年部の取り組みはこういった”ながらボランティア”とも一線を画している。「私は今年、初めて参加しましたがやっていても楽しいですね。自主的にどんどん動くことがこんなに清々しいことだと久々に実感しました」(伊藤寿教青年部広報担当委員・三共電気工業営業部係長、39)
一つの施設には電線ケーブルに吊るされた約4000個の電球が白や青、緑、ピンクに輝き、2台から3台の投光器から放たれた光が木々を立体的にライトアップする。冬の夜を神々しく照らす非日常の小宇宙は施設の子供たちに思い思いの物語を語りかけている。
「素晴らしい事業なので今後も続けて行きたい」と古嶋さんたちは口々に言う。
札電協青年部は2014年度が30周年の節目。児童虐待を防止するオレンジリボン運動の一環として、啓蒙・強化月間の11月には市内の主要施設3ヵ所をオレンジ色に染めるライトアップ運動も計画している。青年部が蒔いたボランティアの芽が地域のコミュニティづくりの一輪を咲かせようとしている。
・2月11日~16日までイルミネーション&ライトアップが行われている養護施設
■羊ヶ丘養護園(豊平区)
■札幌育児園(南区)
■札幌南藻園(中央区)
■興生学園(北区)
■柏葉荘(北区)
(点灯時間はいずれも17~21時)