去るもの日々に疎し、閉店5日で外された「鳩」のマーク

社会・文化

「イトーヨーカドー屯田店」(札幌市北区)から、屋上の「鳩」のマークを象ったイトーヨーカドー看板が、撤去された。閉店から1週間も経たない5日目、ひっそりと姿を消した。建物からヨーカドーの痕跡が、日々消えている。(写真は、「鳩」マークの屋上看板が撤去された旧「イトーヨーカドー屯田店」)

 2024年7月28日、日曜日。24年間の営業を終えるこの日、店内には多くの人が訪れた。閉店時間の19時をまわって行われた閉店セレモニーには、数百人が詰めかけ、店長のお別れの言葉に耳を傾けた。最期に人や物事の本当の評価が分かる「棺を蓋いて事定まる」の故事通り、確かにヨーカドーは愛されていた、そう思える瞬間だった。誰からも強制されず、自然と湧き上がる拍手の渦と「ありがとう」の声が飛び交う独特の現場は、多くの人の記憶に刻まれた。

 そんな「動」と対照的な「静」が、翌日から始まった。入り口付近に掲げられた「イトーヨーカドー」のロゴマークが消され、屋上の「鳩」マークの看板には、足場が着々と組まれていった。日々、この店の名残りが消えていく中、5日目の8月2日、朝方にあった看板が、夕方には撤去された。意識をしていなくても、看板は多くの人の視線を集め、建物に息吹を吹き込むシンボルのような存在。その象徴だった「鳩」が飛び立ち、後には青空に浮く骨組みだけが残った。

 店が去り、人が去ってもヨーカドーで体験した良き思い出を忘れることはない。店に通った人の共通の思いだろう。新しい店に変わっても、上書きされないこともある。店とはそういうものだと思う。

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