札幌地下街「ポールタウン」の誕生時から使われきた、狸小路3丁目の地下接続階段とエスカレーターが、ひっそり消えようとしている。再開発が進む札幌中心部で、52年間にわたって目立たず人を運んできた、いわばB級建築物が役割を終える。(写真は、ポールタウン狸小路3丁目エスカレーターなど撤去工事)
狸小路商店街が、駅前通と交差する西3丁目側と西4丁目側には、地下街ポールタウンに接続する階段とエスカレーターが設置されている。西3丁目側は階段とエスカレーター、西4丁目側は上下ともにエスカレーターとなっている。階段やエスカレーターは、建築物に位置付けられ、札幌冬季五輪の1年前、1971年11月16日に誕生した札幌地下街と同時に供用が開始された。
以来、52年間にわたって多くの人々を地上や地下に運んできたが、再開発ビル「moyuk SAPPORO」の開業に伴い、西3丁目側のエスカレーターと階段の撤去工事が昨年末から始まった。「moyuk」の地下2階はポールタウンと繋がっており、ビル側にも地上に上がるエスカレーターと階段が設置されているため、2つも必要ないということがその理由。
撤去費用は数千万円だが、建築費の高騰で当初予想よりは1・5倍になったという。撤去工事の施工者は、「moyuk」を建設した佐藤工業(本社・東京都中央区)、発注者は、地下街を運営管理している札幌都市開発公社(札幌市中央区)。
撤去されるエスカレーターや階段には仮囲いがされて工事が進行しているが、多くの人は気にも止めずに通り過ぎていく。2024年3月末には完全に撤去され、西3丁目側の狸小路商店街は、広々とした通路になる。撤去を機に、商店街振興組合ではロードヒーティングを敷設する予定だといい、「moyuk」の公開空地と合わせてイベントなどに使われる。この地で大切な役割を果たしてきたB級建築物は、多くの人たちの記憶にも残らず消えてゆく。