職員への威圧的行為などを理由として北海道大学総長を解任された名和豊春氏(69)が、文部科学大臣と北大を相手取って解任処分の取り消しと報酬や慰謝料約1470万円の損害賠償を求めた訴訟の第15回口頭弁論が、2023年10月18日に札幌地裁で行われた。この日は、本人尋問が午前と午後にわたって行われ、右田晃一裁判長は結審することを表明、判決を2024年3月13日(水)13時10分に行うことを示した。(写真は、口頭弁論後の報告会。右から小野寺信勝代理人、佐藤博文代理人、名和豊春氏)
弁護側は、この日の口頭弁論の冒頭に、予備日である10月25日に解任を決めた、総長選考会議の石山喬議長(日軽金ホールディングス元会長)と笠原正典前総長代行・前副学長ら3人の証人申請を含む準備書面を提出したが、右田裁判長は準備書面としては扱わず、意見書として扱うことを示した。
その後、名和氏の本人尋問が行われ、弁護側、被告側が質問。名和氏は、解任の決め手となった、調査委員会の報告書に書かれている項目ごとの質問に、自らの認識と見解を示した。また、調査報告書の元になった録音の一部も再生され、名和氏は違う録音日のものが、一つになっていることなどを指摘した。また、ANA羽田国際線ターミナルVIPラウンジでの対応や空沼小屋の補修費、コミュニケーションマークや電力調達、日ハム球場検討チームの設置などの質問について答弁した。
本人尋問が終了した後に、右田裁判長は、「新たに証人尋問は必要がないので却下する」と述べ、原告側の意見書を取り扱わないことを示し、判決言い渡しを来年3月13日とした。これに対して原告代理人は「最終準備書面が提出できないのはおかしい」と異議を述べ、年内に最終準備書面を提出すること示し、裁判長は受け入れた。
口頭弁論の後の報告会で、佐藤博文代理人は「3人の証人申請を裁判所が拒否したのは、裁判所の審理不尽(判決前の審理が十分に尽くされていないこと)として厳しく批判する。弁論を再開して、証拠調べを続けることの申し立てをすることを、最終書面で合わせて行いたい。裁判所から却下されるのは、ほぼ確実だが、こうした手続きを残しておくことが、判決の評価やその後の不服申し立て、高裁で争う場合には、原審の瑕疵として重要と考えている。来年3月13日には、少しでも良い判決が出るように努力したい」と述べた。
今回のような総長解任としいう社会的にも関心が高い事件の場合、証人尋問が終わった後に最終準備書面を提出して、最終の口頭弁論が行われるのが通例という。尋問が終わって結審すること自体は違法ではないものの、通常は裁判官が双方に最終準備書面を出す用意があるのかどうか、確認をする場合が多い。今回のような大型事件で、証人尋問が終わって、即結審するケースは稀。判決のある来年3月は、この裁判を担当している右田裁判長が異動する当該月。「異動前に判決を出すため、半ば強引に結審した」(小野寺信勝代理人)と話した。