文化庁の登録有形文化財に登録されている江別市文京台緑町561番2の「北海道林木育種場旧庁舎」が、2022年3月、珈房サッポロ珈琲館(本社・札幌市西区、以下サッポロ珈琲館)のカフェ、物販、多目的室、市民ギャラリーとして利用が始まる。サッポロ珈琲館は本社事務所も移転、江別市を新たな活動の拠点にする。(写真は、「北海道林木育種場旧庁舎」)
「北海道林木育種場」は、1927年11月に内務省所管の林業試験場として建てられた2階建(1階は鉄筋コンクリート造約223坪=738・97㎡、2階は木造亜鉛鋼板造約196坪=649・12㎡)、延べ床面積は約420坪(1388・09㎡)。1957年に林野庁北海道林木育種場となり、1996年に新庁舎が建てられるまで、林業の研究施設として利用されてきた。それ以降は、江別市が所有者となり、歴史的建造物として1階を市民や観光客に開放してきた。
建物は、石材と木材を組み合わせた構造で、建設当時に流行していたハーフティンバー(半木骨造=柱や梁、筋交などの軸を組み立てて外観に露出させ、その間に壁材を詰め込む様式)と呼ばれる建築様式を取り入れている。内部の木製ドア、腰壁板、窓枠などに優れた意匠が施され、現存する数少ない大正から昭和初期にかけての建築物の一つ。
市は昨年、この建物の保存・活用事業者を募集、12月にサッポロ珈琲館を優先契約交渉第1位に選定して、今年1月に仮契約を締結、2月に市議会で無償貸与を議決した。無償貸与の期間は2021年9月16日から20年間で、その間の建物の維持管理費はサッポロ珈琲館が負担する。
今年5月に市が屋根や外壁、駐車場等の工事を実施、9月にサッポロ珈琲館に施設を引き渡しており、内装改修工事を経て11月に同社は札幌市西区にある本社を移転、2022年3月にはカフェ、物販、多目的室、市民ギャラリーとして活用が始まる。オープン後は、地域の自治会の利用や小中学校の社会見学も対応する。
サッポロ珈琲館の「本店」(札幌市西区)は、昭和初期に建設された旧北海道工業試験場第2庁舎を改装して利用、「平岸店」(同市豊平区)は1936年にリンゴ選果場として建てられた軟石倉庫を転用しており、歴史的建造物の運営実績がある。