作家・開拓史研究家の北国諒星が『福井県と北海道の縁(えにし)』を刊行

社会・文化

 作家・開拓史研究家の北国諒星(札幌在住、福井県出身)は9月初旬、『福井県と北海道の縁(えにし)ー北海道移民史を中心として』(北海道出版企画センター刊)を刊行した。この本は、著者の郷里でもある福井県と北海道との歴史的な絆を、移民史を中心にまとめたもの。(著作を持つ筆者)

 内容は冒頭で若狭武田氏出身と言われる松前氏家祖・武田信広の存在に触れたあと、第1章で①幕末維新時における山間小藩・大野藩の樺太開拓や箱館戦争への参戦②元越前藩士の大山重(しげる・渡辺剛八)・山本洪堂(こうどう)の2人が維新後、開拓使に出仕し活躍したことを解説。

 この中で、大野藩主・土井利恒が明治新政権の創設した箱館裁判所の副総督に就任することになったものの、病のため赴任直前に辞退したこと、元越前藩士・大山重が明治維新以前に坂本龍馬のもとで亀山社中・海援隊の隊士として活躍した経歴を持つ人物で、維新後は一転して開拓使に出仕し初代屯田事務局長となって屯田兵創設に貢献したことを紹介している。

 第2章では、福井県人の北海道移民史に焦点を当て、①屯田兵としての移民②その他の一般移民・漁業移民に分けて詳しく解説。この中で、屯田兵移民として入植した福井県人の入植先(屯田兵村)を明らかにしたほか、屯田兵の名簿も公開した。一方、その他の一般移民については、年度別の移民数の推移、団体移民の出身地や入植先、移民の暮らしや駅逓所の存在の重要性などを紹介している。

 この中には、入植先に故郷の懐かしい地名などをつけたケースも多く含まれている。また、漁業移民については、出稼ぎ後に定着する漁業者の増加、漁場持になった人々などに触れている。
 最後に「福井県人移民にまつわるこぼれ話・ドラマ」を13項目にまとめて解説。この中で、幕末にもあった福井からの移民、「幸福駅」で有名になった帯広市幸福町の由来、北海道酪農の基礎を築いた町村金弥、中富良野町・富田ファームと福井との縁、不屈の開拓者青山奥左衛門の活動、越前河野村ルーツの南弥太郎家の活躍などを紹介している。
 なお、表紙と裏表紙には、著者自作の絵である『開拓小屋づくり』と『屯田兵の銅像』をデザインとして使用している。B6判、256ページ、1700円+税。
〈北国諒星略歴〉1943年福井県坂井市生まれ、札幌在住。金沢大学法文卒、北海道開発庁(現国土交通省)に入り北海道開発局官房長を経て歴史作家・開拓使研究家に。主な著書に、『幕末維新 えぞ地にかけた男たちの夢』、『歴史探訪 北海道移民史を知る!』など。本名・奥田静夫。

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