北海道最古の写真館「旧小林写真館」、新型コロナ休業中のまま閉館

社会・文化

 函館市大町2番9号にある100年以上の歴史を持つ北海道最古の写真館「旧小林写真館」は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する緊急事態宣言のため4月23日から休業中だったが、緊急事態宣言が延長されることになり最終日の5月10日を待たずに完全閉館した。(写真は、休業中のまま閉館した「旧小林写真館」)

「旧小林写真館」は、1902年に兵庫県神戸市出身の写真家、小林健蔵が現在地で開業したが1907年の函館大火で焼失、翌1908年に建て直された。写真館そのものは1962年に廃業になったが木造2階建ての建物は解体されずに残り、1989年3月に函館市の歴史的景観形成指定建築物に指定された。

 竣工当時と比べると2階のバルコニーが撤去され、増築された部分があるものの原形がほぼ残されている。上げ下げする縦長の窓や胴蛇腹(上下和洋折衷様式の住宅や店舗の壁面にその境目として取り付けられた帯状の突出した装飾)、下見板張り(建物の外壁に長い板材を用いて板の下部が下の板の上端に少し重なるように張ること)などの洋風建築の特徴があり、創建当時の函館のハイカラな雰囲気を偲ばせている。

2008年に空き家になったが、函館市住宅都市施設公社が空き家や住居を店舗として活用する事業を利用して復元改修。2009年から函館市見晴の「フォトスタジオタニスギ写楽館」の谷杉アキラさんが賃借、「旧小林写真館」の名前を継いで営業してきた。

 谷杉さんは、歴史的な建築意匠を活用しながら“モダン&ヴィンテージ”をコンセプトに多くのお客を撮影してきたが、10年間の賃貸契約終了でこのほど閉館することになった。当初は3月末が閉館期日だったが、卒業や入学時期と重なり記念撮影の需要が多いとして5月10日に閉館を延ばしていた。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発せられ、北海道も特定警戒都道府県に指定されたため23日から休業。この緊急事態宣言は5月末まで延長されることになったため、11日までに再開することは難しくなり休業中のまま閉館することを決めた。閉館後の「旧小林写真館」について函館市は、「所有している個人と話し合いたい」としているが現時点ではどうなるかは未定という。

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