トモエのマークで知られる札幌の老舗味噌・醤油メーカーである福山醸造(本社・札幌市)社長福山耕司氏の邸宅が取り壊され更地になった。中島公園のそばに建つ瀟洒な住まいだったが、あたり一帯は遮るものがなくなり広場のような空間が広がる。間もなく重機が入り11階建てマンションの建設が始まる。老舗企業の社長邸宅がまたひとつ消えた。(写真は、更地になった福山邸)
中島公園は中心部から近く、都心に残る自然は憩いの空間を創りだしている。福山邸は中島公園に隣接、せせらぎの音が涼しげな鴨々川のほとりに建っていた。1891年創業の札幌の老舗企業トップの邸宅に相応しく、1200坪の敷地に鬱蒼とした木々が繁り、それに囲まれるように歴史を刻んだ母屋が構えていた。
風雪の記憶を凝縮した家は既になく、時計の針を戻したように更地が広がる。むき出しになった土はそこに何もなかったような初々しさを醸し出している。新しい歴史を刻み始めるように建てられるのが11階建てのマンションだ。東急不動産が『ブランズ札幌中島公園』と命名して建設、来年11月に完成する。総戸数は110戸が予定されている。
札幌で1世紀を超える老舗企業創業家の邸宅は、次々と姿を消している。古くは丸井今井の創業家だった今井家の邸宅、地崎工業創業家の地崎家邸宅もそうだった。そして、今回の福山家邸宅に続き伊藤組土建創業家の伊藤邸も取り壊しが予定されており、高さ100mの高層賃貸マンションに生まれ変わる。「年年歳歳花相似たり」―時の流れを相手にするのは容易ではない。