HAC経営検討委員会録音データ消去の読売新聞記事は、早版と遅版でこんなに違う

マスコミ

 北海道エアシステム(HAC)は7月31日に田村千裕新社長(日本航空前監査役)と藪紀洋専務(道総合政策部政策局長)の二人代表制を採用するなど新体制がスタートしたが、HAC再建問題が大詰めを迎えていた7月初旬、読売新聞が《HAC経営検討委 道、録音データ破棄 9時間半分「会議録」作成せず》というタイトルでスクープ記事を掲載した。しかし、その中に記述されている道庁高官のコメントが道央圏とそれ以外の地域では全く異なる記述になっている。読売新聞の印刷時間差を利用した記事“改竄”に驚きの声が上がっている。(写真左は早刷りの記事、右は遅刷りの道央圏の記事)
 
 記事は7月3日付読売新聞に掲載された。読売新聞は、大半が非公開で行われたHAC経営検討委員会(道幹部10人で構成)の会議録の情報公開請求を行ったところ、議事概要しか作成されていないことが分かったという。さらに読売新聞が取材を進めたところ、事務局を務めた建設部政策課主査がICレコーダーで検討委員会の計6回、合計9時間半に及ぶ会議を録音、会議終了後に簡易的な議事概要を作成した後、内部決済を経て録音データを破棄していたことを突き止めた。
 
 道庁の規定では、議事概要でも問題はなく、録音データの消去についても規定上問題はない。しかし、HACには道から3億円強の資金支援策が行われるなど、意思決定のプロセスを明確にするためにも概要ではなく詳細なやり取りを含めた議事録が本来は求められるものだ。
 
 読売新聞の記述は、ここまでは道民が納得するものだが、道庁高官への取材に基づくコメント部分が道北や道東、道南などの版と道央の版では大きく違っているのだ。
 
 輸送時間の関係で早く刷る早版では、《田中実建設管理局長は読売新聞社の取材に、「単純に削除して何が悪いのか。表に出回ったらまずいもので自分の保身のために消してしまう。(データ破棄がなぜ)悪いのか分からない」と語った。佐々木誠也建設政策課長も「データは不要だから破棄した。道庁内の会議は議事録まで作らないのが普通だ」と釈明した》
 
 この部分の中見出しは《「保身のため、何が悪い」田中実建設管理局長》となっている。
 
 しかし、この記述は道央圏に配送された版では、こう書き換えられている。
 
《田中実建設管理局長は読売新聞社の取材に、「議事録は、概要作成にすることにした。概要版が残っているため、データは消した」と語った。佐々木誠也建設政策課長も「データ不要だから破棄した。道庁内の会議は議事録まで作らないのが普通だ」と釈明した》
 
 佐々木氏のコメントはそのまま記載されているが、田中氏のコメント部分は全く変わっている。中見出しも《「議事録、つくらないのが普通」》と当たり障りないものに変更されている。
 
 早版と道央圏の遅版の印刷時間のタイムラグはどの程度なのかは分からないが、記述内容が大きく変わっている。こうして配送されて読者に届けられた7月3日付読売新聞は、道央圏とそれ以外の読者には全く違ったコメントとして伝えられた。
 
 当の田中氏は、道央圏版しか読んでおらず、出身地方面からの問い合わせで初めて分かったという。田中氏は、この問題についてコメントを避けるが、「今まで30数年の公務員生活で災害対応などマスコミ各社から様々な取材を受けたが、こんなことは初めて」とのみ語っている。

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER