1ヵ月後に迫った夏の参議院議員選挙で北海道選挙区から出馬する自民党・伊達忠一参議の3選を目指す総決起大会が23日、約1000人の支持者を集めて札幌市中央区のロイトン札幌で開かれた。道選挙区の焦点はTPP(環太平洋経済連携協定)。この日は林芳正農水相も応援に駆け付けたが、農業団体との相互理解が深まったとは言えない。挨拶した飛田稔章北農中央会会長は「伊達先生はTPPをしっかり監視して欲しい」と注文をつけた。(写真は、『頑張ろう』と拳を上げた伊達忠一参議ら=左と講演する林芳正農水相=右)
農業団体の政治組織である北海道農協政治連盟(会長・飛田北農中央会会長)は、伊達氏の集会が行われる5日前に伊達氏を推薦・支持しないことを決定している。農業団体が、参議選挙道選挙区で自民候補を推薦も支持もしないのは初めて。昨年の衆院選でTPP断固阻止を掲げて道内で完勝した自民党が、その数ヵ月後にTPP交渉参加を決めたことに対する道内農業者の怒りはかつてないほど強烈であることを物語る。
伊達氏は、林大臣を来道させ農業団体と意見交換すれば理解は深まり、自身の推薦・支持に繋がると考えたようだが、農業団体が集会後に推薦も支持もしないことを決定すれば決定的な亀裂が入る。農業団体は、自民党との溝を最小限にする弥縫策として集会前に参議選に臨む態度を決めたという訳。
伊達氏と林大臣を前に、挨拶した飛田氏は、「TPPが間違った方向に進まないように政府与党の中で頑張ってもらい交渉内容によっては離脱、批准をしないことが必要。伊達先生はしっかりTPPを監視し引き続き国政の場で参議院の重鎮として活躍してもらわなければならない」と語り、“推薦・支持せずとも応援する”という苦肉の態度表明を行った。
林大臣は、「TPP交渉参加は、安倍総理が最終的な決断をしたが、もう少し飛田さんたちとじっくり話をする機会が持てればというのが正直な気持ち。しかし、党では重要5品目が守れないのなら脱退も辞さない決議をしている。この5品目堅守は6年前にも決議した。オーストラリアとの自由貿易交渉に入るにあたってだったが、オーストラリアとの交渉は、最後の一歩がまだまとまらない。それは5品目を守る中身にならないからだ。どんなに時間がかかろうと5品目を守る決議に該当するまでは政府として粘り強く交渉する。TPPもそれぞれの国がお家の事情、いろんな国内の事情を抱えており、どの国とどの分野で共闘していけば決議を守るところに行けるのか政府を挙げて戦略を立てている」と述べた。
総決起大会の主役である伊達氏は、「道内各地で安倍政権の政策を評価してもらっているが、TPPについては衆院選が終わってすぐの交渉参加入りだっただけに迷惑かけているのは事実。重要5品目を守ることは、農業だけでなく地域を守ること、北海道を守ることになる。これが崩壊すれば北海道が崩壊してしまう」と述べ、重要5品目を守れなければTPP断固阻止と聞こえる主張を繰り返した。
伊達氏には、林大臣とともに駆けつけた農林水産政務官の稲津久衆議(道10区、公明)の揃い踏みで農業団体との距離は縮まるという読みがあったようだが、集会に参加したある農業団体幹部は「耳障り良い言葉を並べているだけの印象だった」と語る。
参議選挙後にはTPP交渉参加が本決まりになる。自民候補を推薦・支持せずとも応援する農業界にとっても未体験の選挙戦になりそうだ。