4日に公示され16日投開票に向けて政治決戦が始まる衆院選を前に行われた主要政党8党の道内代表者による公開討論会。今回は、北海道にとって最も影響が大きいTPP交渉参加問題や北海道新幹線札幌延伸、北方領土返還について8党代表者の主張をお届けする。
(写真は、各党の主張を訴えた道内代表者による公開討論会)
参加したのは民主党北海道代表荒井聡氏、自民党道連会長伊東良孝氏、公明党道本部代表代行横山信一氏、日本維新の会北海道ブロック担当中田宏氏、共産党道副委員長畠山和也氏、みんなの党北海道ブロック担当山内康一氏、社民党道連代表道林実氏、新党大地幹事長代行浅野貴博氏。
TPPについて各党の意見は次の通り。
維新の中田氏は、「協議にすみやかに参加すべき。そのうえで日本の国がなくなるような妥協を強いられるのなら協定を結ばなければ良い」
共産党の畠山氏は、「断固参加すべきではない。食糧を守るべき。どの国も農業や食料を守る政策をとっている。医療、保険もTPPで弱者や高齢者が一番影響を受ける。国民の暮らしや産業を守るべき」
みんなの山内氏は、「TPP参加に賛成。農業に不利益があるなら例外措置を設ける。早くTPP交渉に入ることが日本の国益。農業は、専業・主業農家を強くする直接支払政策を進める」
社民党の道林氏は、「TPP協議に参加は反対。実態を反映してまず政策をとってからTPPに進むのが手順。現状では手順が違っている」
大地の浅野氏は、「世界の中の日本として自由貿易は推進すべき。しかし、TPPは自由貿易なのか。ルール、秩序があって自由貿易。TPPは自由貿易ではない。2国間のEPA、FTAを地道に進めるべきで、推進派はTPPに洗脳されている」
民主党の荒井氏は、「米国は3つの要求を吞まないとTPP交渉に参加させないと言っている。①BSE汚染牛の輸入解禁②日本郵便の簡易保険を辞める③軽自動車を廃止する――の3つだ。その要求を解決できるはずがない。TPPは中国封じ込めのブロック経済圏づくり。ブロック経済は戦争の原因にもなった。WTOという貿易ルールで対応すべきでケネディラウンドとTPPは違う」
自民党の伊東氏は、「自由貿易を進めるべきだが、TPPは関税撤廃なので参加したら途中でやめるわけにはいかない。北海道では一次産業の生産額1兆2千億円の倍近い影響がある。農業、水産業を守るためにTPPには断固反対」
公明党の横山氏は、「例外なき関税撤廃のブロック経済になぜ入っていくのか。北海道経済は1次産業で成り立っている。TPPは北海道の崩壊に繋がる。公明党は全道各地でTPP反対集会を実施したがセミナー前に反対11%、わからない19%がセミナー後には賛成5%、わからないは8%になり反対が9割になった。国民にわかりやすい議論をすべきだ」
消費増税、社会保障の一体改革については、どうか。「消費増税は北海道だけで1兆円になり暮らし、経済を悪化させる。まず320億円の政党助成金を辞めるなど消費税に頼らず行政改革から始めるべき」(共産党畠山氏)、「消費税の前にやるべきことがある。増税しても公共工事に出ていくし景気の悪い時に増税をしたらダメ。歳入庁の設置で徴収漏れをなくすことから始める」(みんな山内氏)、「消費増税の前にもっとやるべきことがある。絆創膏貼りの増税は如何なものか」(社民党道林氏)、「大反対。税の感度をもっと上げるべきで密室の野合で決まった増税で国民は瀕死の状態になる」(大地浅野氏)、「日本が破綻したら誰も助けてくれない。苦しいお願いだが消費増税をお願いしたい」(民主党荒井氏)、「毎年1兆円の社会保障費が増えていく。無駄を削っても数千億円にしかならない。直接税を下げて使った金額の税率に理解をお願いしたい」(自民党伊東氏)、「持続した社会保障のためにはいずれ上げなければならない。デフレ不況の中で乗り越える対経済対策をしっかりとするとともに食料品の軽減税率導入を」(公明党無の横山氏)、「消費増税の切り口は各政党それぞれだが、複雑な社会の一つのだ。社会保障は富の再分配。わが党はなぜ消費税を地方税化するのかを分かりやすく伝えていく」(維新の中田氏)
会場からは北海道新幹線札幌延伸について工期24年をもっと早くできないかと質問が出た。これについて、「札幌延伸を途中でやめることには影響が大きい。やるべきだ」(社民党道林氏)、「札幌に来てからが大事。鉄道、高速道路、航空路で交通体系を議論すべき」(大地浅野氏)、「24年間の工期を提示せざるを得なかったが、補正で財源が出てくれば工期は短縮していくべき」(民主党荒井氏)、「24年の工期は10~15年に短縮すべきだ」(自民党伊東氏)、「札幌延伸効果をどうするのか様々な議論を」(公明党横山氏)、「立ち止まって考えるべき。東北は並行在来線が真っ赤で自治体が負担している」(維新中田氏)、「並行在来線が守れるのか。全道の交通網を考えるべき」(共産党畠山氏)、「わが党は経済性を大事にしている。投資と効果を検証して経済的に割に合うのなら早くやるべき」(みんな山内氏)
また北方領土については、「4島は絶対取り戻す。現実的な視点で段階的な4島返還を」(大地浅野氏)、「サハリンとの関係を強めて経済協力を進めることが領土問題解決の糸口になる」(民主党荒井氏)、「モスクワで親日派国会議員と会ってプーチン大統領に後押しをお願いした。しビザなし交流で北方領土にも行った。4島一括でなくても順次4島返還を」(自民党伊東氏)、「日本は毅然とした態度で取り戻すべき」(公明党横山氏)、「経済協力、資源協力など絡め手の用意をすべき」(維新中田氏)、「歴史的には全千島が日本の領土。財産権の侵害は政治の責任」(共産党畠山氏)、「ロシア大統領の権力基盤が強い時にしか領土問題は進展しない。お互いのウインウインの関係で問題解決していかなければならない」(みんな山内氏)、「多方面の議論が必要。北海道的にも運動を広めないといけない」(社民党道道林氏)
時間が限られている公開討論会では各党の主張も皮相的なものにならざるを得ないが、自らの言葉で訴える主張にはなるほどと胸にストンと落ちる意見もあった。TPP交渉参加を巡っては、荒井氏や伊東氏は党の主張とは違う北海道仕様とも言える意見を表明していたことが印象に残った。政治は個と衆の結節点をいかに築いていくかが問われる舞台劇のような面も持つ。4日から始まる12日間の選挙戦で有権者も言葉の空中戦の中から感度を磨き、次を託せるに足る人物を掘り起こす努力が必要になる。