「TPP交渉参加問題を考える道民集会」が4日、札幌市中央区の共済ホールで約650人を集めて開催された。基調講演をした山口二郎北大法学部教授は、「TPPは持続可能社会か焼畑的効率性社会かを問うものだ。小泉構造改革によって日本は生きにくい疲弊した社会になった。TPPは小泉改革の再来になり多様な地域、多様な産業が維持できなくなる」と述べ、「問われているのは日本の民主政治そのもの。代表者に白紙委任しているわけではない。常に声を上げて一緒に議論することが民主主義だ」と道民一人ひとりがTPPを自分の問題として考える良いチャンスと結論付けた。(写真は講演する山口二郎氏)
道民集会の実行委員長を務めるJA北海道中央会の飛田稔章会長は、「TPP参加で日本の形がアメリカと同じになる。主権を持った国が他の国のいいなりになっていいのか」と強くアピール、「一番心配なのは食料自給率が下がることだ。お金を出しても食料が買えない状況がそこまで来ている。現に18ヵ国が食糧輸出を止めている。世界の暴動の原因も食料だ。日本の形がTPP参加によってどうなるのかを道民、国民は考えて欲しい」と訴えた。
激励挨拶に立った高橋はるみ知事は、「道内の農林水産業で2兆円の影響が出て道民の暮らしそのものに直結する問題。地域は立ち行かなくなり、食料の安定供給も揺るがすなど様々な悪い影響が出てくる可能性がある。オール北海道で取り組みを進めていく重要な時期であり心をひとつにして頑張っていきたい」と語った。
基調講演をした山口氏は、政治学者の立場から新自由主義の考え方をもとに規制緩和や市場主義を導入した小泉改革を検証するとともに、3・11が政治は何のためにあるのかを国民に知らしめたと参加者たちに語りかけた。
山口氏はTPPを推進する声の代表的なものに、経済成長でもっと豊かになれるという成長神話が根強くあることを指摘し、「2000年ころまでは企業の成長と勤労者所得は正の相関関係があったが、小泉改革以降は企業収益と勤労者所得が乖離していく負の相関関係になった。小泉改革に代表される新自由主義は若年層に職がないなどのしわ寄せが現れており、日本の社会はお先真っ暗という状況だ」と道民、国民はもっと危機感を抱くべきと主張。
さらに、「日本は社会的にも経済的にもプレートの歪を溜め込んでいる状態」とした。
また当たり前の言葉を疑うことも必要とし、「強いことは本当に必要なのか。焼畑農業的に自由競争ではコミュニティの崩壊、生活の場そのものがなくなってしまう。サブプライムローンやリーマンショックのように今儲かれば良いという考え方から30年、50年先を見据えた持続可能性を考えて地域やコミュニティを大事にしていく政治を選択すべきではないか」と熱っぽく語った。
山口氏は民主党政権の理論的支柱として政権交代にひと役買った。小泉元首相など自民党政権が進めた新自由主義からの転換は実現したもののTPP問題が民主党政権に浮上し、政府はそれを推し進めようとしている現状を、「まるでリフォーム詐欺にあったようなものだ」と批判した。