和解の場となった5区補選 札幌市長選の亀裂解消

政治全般

 衆院北海道5区(札幌市厚別区、石狩市、千歳市、恵庭市など)補欠選挙は、与野党ともに大物が駆けつけ応援合戦がデッドヒートしているが、昨年春の札幌市長選で支援候補が割れた札幌商工会議所正副会頭など経済人や政治家たちに思わぬ結束効果をもたらしている。支援者が離れたりくっついたりするのは選挙の常だが、全国から注目を集める5区補選はわだかまりを解消する絶好の機会にもなっているようだ。IMG_9988
IMG_9953(写真上は、和田義明氏と橋本聖子氏。写真下は和田氏支援で一致結束した札商正副会頭)

 昨年春の札幌市長選で面子を潰された政治家と言えば、自民党参議で当時党札幌支部連合会(札連)会長だった橋本聖子氏。経済界の声も勘案して副市長だった秋元克広氏を自民候補にしようとしたが、それを選考の場で激しく面罵したのが故町村信孝衆議だった。
「不倶戴天の敵、上田文雄市長の元で副市長を務めた人物を自民が推すわけにはいかない」――町村氏は市長候補選びを白紙にさせて総務省出身の本間奈々氏に二度目の市長選出馬の道を作った。
 
 結局、秋元氏は当時の民主推薦候補となり、本間氏は自民公明の与党候補となった。この段階で橋本氏と町村氏は互いの関係を断絶、その流れで橋本氏は札連会長も辞任、両者に亀裂ができた。
 
 元々札商を含めた経済界には、秋元支持派が多かった。しかし、時の与党が推す候補を支援しない訳にはいかない。このため経済界も秋元派と本間派に割れた。与野党の正面対決という市長選の構図だったものの、実際には秋元氏の選対事務所に橋本氏や自民大物議員が為書きを寄せるなど政党の垣根が低い選挙戦だった。
 
 蓋を開けると秋元氏の圧勝。本間氏支持だったはずの自民党伊達忠一参議は素早く秋元氏と安倍首相を面会させ、安倍首相をして「秋元さんはもともと自民の候補だった」と言わせる機会を作り、町村氏の面目を潰すようなことまでやってのけた。
 
 経済人、政治家たちに深い溝を作った市長選の2ヵ月後、町村氏は亡くなる。溝を埋める機会はなかなか訪れなかったが、市長選から1年、町村氏の死去から10ヵ月が経って巡ってきたのが5区補選。町村氏の娘婿で三菱商事勤務だった和田義明氏が自民党公認で出馬したことで、市長選のわだかまりを残したままだった札商の経済人や政治家には格好の場となったわけだ。
 
 13日には、札商正副会頭や橋本氏が和田氏と面談する機会もあった。その場で、札商は市長選のねじれをあらためて払拭、橋本氏も「(町村先生とは)いろいろありましたが、応援します」と和田氏の全面支援で一致した。
 選挙の溝は、選挙で解消する――和田氏の勝利となればそのセオリー通りになるだろう。市長選で勝った秋元市長は5区補選に深入りしない姿勢を示す。どちらの陣営にも与しない選挙への耐性を作ろうとしているのか。

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