2020年4月から上下分離で運行の民間委託が始まる札幌市電。民間委託業者が支払う車両や施設の使用料が年間9億4000万円程度になる見通しだ。累積赤字削減を目指した上下分離の大きな焦点である施設使用料、9億4000万円の妥当性を巡る議論が活発化しそうだ。(写真は、札幌市電「ポラリス」)

 札幌市電は、人件費を抑制して累積損失を解消するため20年4月から旅客を運ぶ事業者と施設や車両を保有、整備する事業者に分ける「上下分離」に移行する予定になっている。上の運行は現在、地下鉄駅の業務を行っている一般財団法人札幌市交通事業振興公社が担い、下の施設や車両の保有、整備は従来通り市交通局が担う。

 市電運転士は現在約70人で、そのうち3割は市の職員、7割は市の非常勤職員。来年4月の上下分離に際して7割の非常勤職員は希望に応じて交通事業振興公社の正職員として雇用する方向。20年4月から「同一労働同一賃金」が徹底されるため、非常勤職員を抱える市の負担が増えれば累損解消が遠のくことも上下分離に踏み切った一因だ。

 札幌市電は、15年12月のループ化で乗客が増加、ループ化初年度の15年度は11億5900万円、16年度12億7900万円、17年度14億3500万円、18年度見込みは14億2300万円となっている。一方営業収支は15年度4億円の赤字、16年度4億9200万円の赤字、17年度4億1600万円の赤字、18年度も4億3000万円の赤字見込みとなっている。

 市はこのほど上限分離後の車両、線路、電停など施設を合計した使用料を年間9億4000万円と算定した。これは上下分離後の収支算定期間を26年間としてその平均概算値を採用したもので、この金額には、交通局が施設、車両の保有整備と維持管理を行う費用も算入されており、実際に交通事業振興公社が支払う額はこれよりも少ない。施設使用料は、上下分離後の経営の大きな柱になるため金額を巡る議論が市議会をも交えて活発化しそうだ。

 交通事業振興公社は、市が50%出資する出資団体で、理事長はこれまで市の交通事業管理者が兼務していたが今年4月から前交通事業管理者の藤井通透氏の専任体制になっている。職員数は604人(18年10月1日現在)。


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