4月10日に投開票の札幌市長選に出馬する現職の上田文雄氏(62、民主・社民・国民新・市民ネット推薦)と新人本間奈々氏(41、元総務省自治大学校研究部長、自民推薦)の公開討論会が17日午後6時半から、道新ホールで行われた。東日本大震災の影響もあってか会場は定員(800人)の3分の1程度しか埋まらなかったが、2人の舌戦は予想以上にヒートアップした。2回に分けて掲載する。(写真は、公開討論会で意見を述べ合う2人の市長候補)
総務省出身の本間氏は自治体財政のプロとして札幌市は財政再建と公共投資は両立できると主張、上田氏は2期8年間の在任中に市債残高を減らした実績を強調した。
札幌の街づくりについて2人の主張は大きく隔たった。
本間氏は「最大の問題は、190万人口で行政ニーズは大きいのに自分たちで支える産業が乏しい。1000億円の地方交付税依存を正し、足腰のしっかりした産業を作るべき」として、「政令市で最下位の市民1人当たりの公共投資を増やすとともに医療、介護など生活産業関連や知識集約産業の厚みを作っていく」と強調した。
上田氏は、これからの札幌に必要なのは安全で安心して住めることが一番とし、全国から注目される魅力的な街・札幌を発展させていくことが大切と述べた。
公共投資について、「成長期と成熟期では投資に対する考え方が違ってくる。人口減少や高齢化によって若年生産人口が減っていく中で、社会インフラ投資も変わっていく。どんどん公共投資を増やして市債残高を増やすのは誤った方向だ」とバッサリと本間氏の主張を切り崩した。「先食いしないのが私の主張」と断じた。
地方交付税について、上田氏は「本間氏が『もらっている』と言ったのは問題。恵んでもらっているのではないし当然の権利」と言うと、本間氏もすかさず「地方交付税を前提に街づくりをすることが札幌のためにならないということを言った。自立できる街づくりをやっていくということ」と切り返した。
地下鉄、市電問題でも2人の主張は対極にあった。
本間氏は地下鉄が単年度黒字を確保しており、雪がある札幌の都市機能を維持するためには、「市電よりも地下鉄の延伸を優先するべきで、まず交通空白地帯の清田方向で札幌ドームまで優先的に延長することが必要」とした。
上田氏は、「市電は札幌市民に欠くことができない財産。路線のループ化で使い勝手の良い低床路面電車を走らせ、新しい街のシンボルとして整備すべき」と訴え、「地下鉄延伸には800~1000億円が必要で許認可事業のために30年で黒字にしなければならない。地下鉄が通っていない地域の市民の気持ちは分かるが、延伸は非現実的。それよりも今ある地下鉄に乗って黒字化を定着させていくことを優先させるべきだ」とした。
本間氏は札幌の住民1人当たりの公共投資について、2007年に3万7000円、10年には3万6000円になって政令市では最下位であり、政令市平均の6万円まで引き上げるべきと言うと、上田氏は道債残高は5兆7000億円あって札幌市民一人当たりの道債残高と市債残高を合計すると政令市のワースト3に入ると述べ、札幌単独で公共投資を考えるべきではないと持論を展開した。
両候補の意見が同じだったのは子育てと介護。待機児童1000人を減らしていき働く女性を増やしていくことや子育ての悩みなど分かち合える施設を増やし、元気な高齢者はその役割を果たすことができる街づくりが大事とするなど「この分野は差がないのかなと思う」(本間氏)
2人の舌戦は互角の戦いのように見え、2期8年の実績を持つ上田氏の言葉から手堅い市政運営の片鱗が見えたものの、様々な主張の底には「感性の上田、理性の本間」というような場面が垣間見られた。
以下、次回に続く。