高橋はるみ知事は、17日に調整運転中だった北海道電力泊原発3号機の営業運転入りを容認したが、前日の午後11時半ころまで行われた道議会産炭地振興・エネルギー問題調査特別委員会の議論は十分に反映されたのか。知事判断の大きな一角を占めた調査特別委員会での質疑を、昨日に続いて第2弾として詳報する。向井昭彦議員(民主党・道民連合、札幌市北区、1期)、池本柳次議員(民主党・道民連合、十勝総合振興局、4期)、星野高志議員(民主党・道民連合、札幌市東区、5期)の質疑。(写真は質問に答える高橋はるみ知事)
向井議員 8月9日に原子力保安院から北電に最終検査を受けるように要請があって、北電が泊3号機の営業運転開始の最終申請を行った。それに対して、知事は「このタイミングでの申請は理解しかねる」と述べた。地元軽視と言って感情むき出しの憤りを露にした。北電は、なぜその日のうちに最終検査の申請を行う必要があったのか、疑問であると言わざるを得ない。道の判断を待ってからではなぜダメだったのか、北電の行動は全く理解に苦しむ。
8月12日に経産大臣は、北電が自らの判断において申請したと知事に電話で伝えたというが、北電は北海道や北海道議会、言い換えれば道民の合意、すなわち地元の合意を得ることもなく頭越しに申請を行ったということになると理解している。しかし、あれだけ経産省に憤りを露にした知事が北電に対しては残念というだけでいいのか、知事の見解を伺う。
知事 北電の受検申請について10日の夜に海江田大臣から私に電話があってその際、北電に対しては申請状況の確認を行った旨の説明があった。このことから改めて北電に対し私どもから確認を行った。北電によると、原子力安全保安院からは「最終検査が未受検である」との指摘があり、受検することは事業者の法令義務であり、国からの指摘は監督を受ける北電にとって重いことから受検することにしたものと聞いている。
私としては、北電が法令の遵守とともに地元の理解に十分配慮する必要があると考えている。このようなことから、今回の対応については遺憾であると考えるに至った。
向井議員 今回、頭越しに北電は最終検査の申請を行ったが、今後3号機の営業運転開始さらには1、2号機の再稼動に向けてどのような判断をするにせよ、道民の合意を得る何らかの仕組みづくり、あるいは北電に対する担保が必要だと考えるが、知事の見解は。
知事 1号機は現在定期検査中であり2号機についても今月中にも定期検査に入ることから、再稼動時にストレステストの1次評価を受けた結果によって、原子炉の運転の再開の可否について判断されるものと考えている。
私としては、原子力発電所に関しては、何よりも安全を優先し道民の皆様の不安の解消に務めながら対応するものと考えているところであり、国及び事業者において責任をもって安全対策に万全を期すと共に地域に対する情報提供などをこれまで以上に丁寧に行うなどにより、立地地域の理解を得ながら対応が図られるように強く求めていく。
向井議員 地元4町村以外の後志の市町村に対して情報提供を行うとしているが、やはり同様に何らかの仕組みづくりが必要だと考える。
知事 再稼動にあたっては安全協定を締結している4町村との間では協議をすることとしているが、後志管内の市町村においても、今回の福島第一原発事故以降、原発の安全性に対する関心が高くなっていることから後志管内自治体との一層の意思疎通を図るため、通報連絡協定を含め情報の共有や共通理解の醸成を図り、連携体制の構築に向けて早期に関係自治体と検討を行う考え。
向井議員 後志の他の市町村の合意を得るという考え方はあるか伺いたい。
知事 私としては本日の議論を踏まえ道の考え方を整理をし、国に伝えていきたいと考えている。その過程において安全協定を締結としている道と地元4町村と共通の認識に立つ必要があることから、道の考え方について4町村に確認をしていく考え。また、後志管内の市町村に対しては、今回の福島原発の事故以降、地元の声を受けて泊発電所の緊急安全対策などの対応や道で実施した立ち入り調査の結果、3号機の取り扱いに関する国への照会や回答などについて情報提供を致しているところであり、今回の泊3号機に関する情報についても迅速な情報提供を行っていく考え。
向井議員 営業運転開始については、3・11の福島第一原発事故を受けて道民に対する情報提供を行うことを大前提に広く道民の意見をしっかり聞いて、慎重に対処する必要があると考える。全国の原発運転に大きな影響を及ぼすことを踏まえ一旦立ち止まり、知事の賢明な判断を求め私の質問を終わる。
池本議員 8月9日に国からの要請で北電が最終検査の申請をし、道はそれは許されないと抗議したけれどもやられてしまった。さらにMOX燃料について、5月の19日の臨時議会が終わった翌20日にこれまた頭越しに経済産業省に北電はMOX燃料の契約の申請をした。これも事前の道との協議がないままに行われた。信頼関係は失われているのは異常だと思う。正常な手続きを踏まないままに国も北電も今回の手法を取ったわけだ。今後も含めて道民の責任者たる知事ならびに私ども道議会、関係する自治体との間における親切な協議、こういう真摯な姿勢、手続きが必要だと考える。
そういう意味では知事が遺憾に思うと表明された気持ちは私も共有できると思う。国ならびに北電に対しては三度このような不正常な頭越しの対応をしないように、厳しくしっかり担保を取るように知事の立場で対応していただきたい。
知事 原子力発電所は何よりも安全性の確保が不可欠であり、安全対策に万全を期す必要があるとともに地域の理解と信頼の上に成り立つものと考えている。また、道では調整運転中の3号機が再稼動に当たるかどうかについて、国に照会し、国の回答が示されたうえで道としての見解を示した後に最終検査の手続きが進められるものと考えていた。
国の回答がなされた同日に北電と国との間で最終検査が進められたことは、遺憾であるという見解を示したところ。道としては、国や北電に対して原子力発電所は地元の理解と
信頼のうえに成り立っていることを十分に認識してもらうとともに今後も、より一層の地元の理解に向け情報の提供や意思の疎通に務めるよう求めて参りたい。
星野議員 知事は5月19日の記者会見で浜岡原発に対して国が中止の勧告を行ったこと、浜岡と泊はどう違うか、あるいは福島原発の事故の原因が津波によるものなのか、地震によるものなのかはっきりしないうちは泊に関してはいえない状況だと述べていた。さらにそもそも北海道としてどのような原子力に対するスタンスをもった上で、今回の個別事例についての判断をするのかが明らかにならなければならないと私は考えている。まず、原子力発電所の安全問題を踏まえたうえで今回の判断をすべきという意見から、国に対して知事が行っている照会、浜岡との違い、地震の影響、その2点についても解明をしたうえで今回の判断をするべきと考えるが。
知事 道ではこれまで原子力発電所の再稼動については浜岡原発と泊発電所の扱いが異なる根拠など、国に責任ある説明をしてもらう必要があると繰り返し申し上げてきた。こうしたなか国から調整運転中の泊3号機については、再稼動には当たらないと改めて整理がされ、所謂営業運転により稼働中の原子力発電所と同様の位置づけと示された。
一方で泊3号機はストレステストの2次評価の対象とされ、安全性の向上と国民、住民の安心、信頼の確保のため地震、津波それらの複合事象に対する安全性に関する総合的な評価がなされ、その結果について原子力安全保安院と原子力委員会がダブルチェックを行い、政府として継続運転の可否を判断することとされた。国に照会してきた事項は現時点においてはその回答を求めることは要しないものと考えている。
星野議員 国が今回の3号機は再稼動に当たらないということに対して判断をするというのでは、とても道民の理解を得られない。ましてや今日こんな時間までかかって、とにかく1日で上げることにこだわっている理由がどうしても私には納得ができない。何か、ここまでこんな時間までやっているとなると、もしかしたら、誰にも言えない約束があったのではないかという憶測さえ出始めている。
そんな憶測が出てしまっては、これから道民の理解を得て進めるというのはなかなか大変なものがある。したがって、今日議会が終わって考え方を整理するといわれているが、その点はしっかりと頭に入れた上で判断いただきたい。
個別の事案を判断するに当たって、そもそも北海道としては基本的スタンスをどこにおいているのか。それがはっきりと示されなければならない。12年前に北海道は、所謂脱原発条例を制定したし、最近では町村から意見書なども上がってきている。知事の基本的見解は。
知事 省エネ、新エネ促進条例についての質問だが、平成12年に制定された本条例においては、原子力を過渡的エネルギーと位置づけ脱原発の姿勢にたって新エネルギーの利用を拡大する旨、定めている。
また、このたびの福島第一原発事故を契機にして道内の自治体において原子力に関し、安全性や再生可能エネルギーの導入により過度の依存の低減などの意見書が採択されている。
私としては本条例やこれら意見書の趣旨などをしっかりと受け止め、新エネルギーの開発導入の促進などを通じてエネルギーの安定供給に努め、道民の生活の安定や産業活動の活性化を図って参りたい。
星野議員 条例は知事が就任する以前に制定されたものだが、脱原発の視点に立ってという姿勢を示されたのは今日がおそらく初めてだと記憶している。そうであるとするならば、知事が日ごろ言われている北海道は自然エネルギーの宝庫であるということと合わせて、条例の立場に立って、そして北海道の状況を踏まえるならば、今後具体的ロードマップ作りなどもしていかなければならない。