高橋はるみ北海道知事(64)と吉川貴盛代議士(自民党道連会長・自民党経理局長、北海道2区、67)の信頼関係が微妙だったのは周知の事実だが、4月の道特別職人事の「山谷吉宏副知事斬り」で溝が決定的になったようだ。知事は、「吉川代議士と訣別することになるのを承知でやった」と親しい道議や側近に話しているというのがもっぱらの噂だ。(写真は、道庁本庁舎)
それどころか、「今の自民党道議の30%くらいは私とのツーショットで当選してきた人たち。自力で当選した人たちではない」と某有力道議に話したという。30%と言えば15~16人にあたる。殆どは1期、2期生クラスだろう。情けないというべきか、甞められたというべきか。
しかし、一方でその1期、2期生たちが「自民党は来年の知事選で候補を立てられないのだから知事に5選を目指してもらおう」と仲間に呼びかけているという。どこまでお目出たいのだろう、というのが道議OBの声である。
さらに、山谷副知事斬りで官邸とのパイプが切れるのではないかとの周囲の懸念に対しては、「吉川代議士に頼ってきたが、それほどのことではなかった」とこれまた強気だという。
一方、知事周辺は道内経済界に向けても様々な働き掛けを行っているようで、事情通はこんなことを語っている。「知事は経済界の中に高橋5選支持を広げる核のようなものを作りたいようで個別に働き掛けを行っているようだ。近々、そういう経済人たちが『高橋知事を励ます会』を企画しているという。『5選を期待する声が上がっている』という環境づくりではないか」
それにしても、山谷副知事を通じた道庁との強いパイプをひと言の相談もなしに切られた吉川自民党道連会長の面目は丸つぶれだ。若手道議らからは、「知事選で独自候補を立てられない」と言われ、知事に足下を見透かされたように重要人事案件を無視されたわけで、吉川会長にとってもこのままでは地盤沈下は否めない。正念場に立たされていると言えそうだ。
知事がなぜこの時期に山谷副知事斬りなど自民党道連との関係悪化を承知で動いたのか、という疑問の声は多い。しかし、それは愚問というもの。知事はいずれやるつもりでいたのである。「5選は自分のやりたいようにやる」ということだろう。自民党を含めた政財界周辺は、5選をやるのかやらないのか、と散々噂してきたが、それを見抜けなかっただけのことである。
有力な政界人から「知事は5選などできるわけがない」などという言葉も聞かれたが、誰もその根拠を示してこなかったのは事実だ。その中での知事の行動だったことを考えるべきだろう。
しかし、知事の山谷副知事斬りの手法については疑惑がある。知事は山谷氏を退任させるにあたり、巷間に流布されている真偽不祥の情報まで持ち出したという。その情報は昨年春ころ、流布され事実無根と判断され立ち消えとなった情報である。それを知事ともあろう人が、周辺に退任させるに至ったひとつの理由と言っているのである。これは常識外であり、“ガセネタ”と知りつつ、これを利用する意図があったのではないかとの推察もできる。
いずれにせよ、“吉川憎し”の煽りを食ったのは当の山谷副知事。大迷惑というほかない。高橋知事の5選への胎動が、与野党に波紋を広げたのは必至。残り1年、知事の賭けの行動が与野党の間隙を突いたことは確かなようだ。
(2018年3月5日付の「山谷副知事退任!高橋はるみ知事5選に向け水面下の準備工作」と合わせてお読みください)