高橋はるみ北海道知事(61)が4期目として初めて迎える第二回定例道議会が16日開会した。朝10時過ぎから行われた知事の道政執行方針演説は例年より短めの27分間だったが、内容は「大胆に挑戦」、「前例にとらわれない発想と失敗を恐れない行動力」、「北海道の創生に私の持てるすべて傾ける」など鋭角的な表現が随所に散りばめられた。しかし、今回は例年締めの部分で引用していた偉人の言葉がなくリアリティな表現だけが目立つ演説になった。(写真は、4期目初の道政執行方針演説をする高橋はるみ知事)
例年2月の第一定例道議会で行われる知事の道政執行方針演説。知事選のある年は6月の二定で行われ、今回は知事にとって初当選以来、13回目の演説になる。いつもは衣装も演説の思いを託したように選ばれていたようだが、道政史上初の4期目でしかもスタートアップの年の演説にも拘わらず衣装は何故か白っぽい質素なもののように見えた。ことさら気負いを排し平常心で臨むことを心がけようとしたような出で立ちだった。
知事は、まず道政に臨む基本姿勢を表明。「本道を取り巻く環境は大きく変化している」として世界経済の中でアジアの存在感が増していること、日本ではデフレ脱却と経済の好循環に向けた政策が推進され地方創生の取り組みが重点的に進められていること、さらに2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けた日本全体の活性化や想定される大災害に備えた国土強靭化などが課題になっていることを挙げた。
そのうえで、「北海道は全国を上回るスピードで進む人口減少への対応という地域の存亡にかかる難題に直面しているが、一方でアジア諸国からの注目度が急速に高まるなど新たな飛躍につながる動きが着実に広がりつつある。この追い風を確実に捉え、怯むことなく直面する困難を克服して我が国全体にも貢献していかなければならない」と決意を示した。
続けて、「今がまさに正念場で私たちには未来への戦略と行動が求められている。私は人口減少危機突破を道政の最重要課題に位置付け、将来への夢や希望を持ち続けることができる活力ある地域社会の実現をめざして道民と力を合わせ今後の道政を進める」と述べた。
知事は、道政執行のポイントとして次の3つを掲げた。第1は地域と一体で進める道政。地方創生の取り組みが本格化している中で、知恵と力を結集し北海道の創生を成し遂げて地域をしっかり守って行く姿勢を強調、「徹底した現場主義を貫き、地域の方々と一体になって様々な課題に全力で取り組む」とした。
第2は世界に飛躍する道政で、人口減少などの影響で国内市場の拡大が望めない中、アジアの経済発展などにより本道が世界に向けてチャレンジする絶好の機会が到来している認識を示し、「国際社会の変化や時代の潮流を的確に捉え、多彩な北海道の価値と様々な強みを生かした戦略的な取り組みを進め、本道の持続的な発展に繋がる流れを世界中から呼び込んでいく」と訴えた。
第3は、大胆に挑戦する道政で、「道政の推進に当たり私自身が新しい発想で今まで以上に大胆に行動していく。そのことを自らの心に刻んでいる。前例にとらわれない発想と失敗を恐れない行動力を基に、すべての政策手段を総動員し強い決意で本道の新たなステージを切り開いていく覚悟だ」とまるで鉄の女のような表現を使った。
その後は各種の政策について言及、道産食品の輸出額1000億円達成や2020年に外国人観光客300万人の目標を掲げたほか、北極海航路の活用可能性に向けた検討、薬用作物の振興、絶滅危惧種のシマフクロウなど多様な野生生物の生育環境作りの推進、バックアップ拠点機能を一層強化することなどを進めていくことを示した。
結びの部分で例年使われていた偉人の言葉は、今年は姿を消した。知事は語りかけるようにこう述べた。「私たちが進む道の先にはいくつもの試練が立ちはだかり、直面する人口減少の危機突破は前例がなくあらかじめ回答が用意された問題ではない。しかし、今を生きる私たちは、豊かな故郷北海道を次の世代にしっかりと引き継いでいく大きな責務を担っている。私たち自身が創造力と行動力を磨き上げ、処方箋を自ら見つけ出し、それを推し進め実行力によってこの難局を乗り越え、新たな未来を創りあげて行かなければならない」
1869年(明治2年)、北海道と命名されてから2018年で150年になることに触れ、「幾多の試練を克服しながら発展の礎を築いた先人の不撓不屈の信念と不断の努力なしに今日の北海道はない。北海道150年という歴史の節目を迎えようとしている今、私たちがどのように行動していくかによって、半世紀後、200年を迎えた時の北海道の姿は大きく変わる。豊かな自然と共存してきたアイヌの人たちの精神、開拓に心血を注いだ先人、そして地域の発展に力を尽くした多くの人々の尊い志を胸に刻み、私たちの故郷である北海道の輝ける未来に思いを馳せながら、道民と心を一つにして北海道の創生に私の持てるすべてを傾ける」と締めくくった。
ちなみに過去の道政執行方針演説で高橋知事が引用した偉人たちは次の通り。2011年松下幸之助、12年依田勉三、13年北海道日本ハムファイターズ、14年黒沢酉蔵。