北海道新聞社の主催による道知事選公開討論会が18日、札幌市中央区の道新ホールで開かれた。立候補を予定しているフリーキャスターの佐藤のりゆき氏(65、民主党北海道支持、共産党道委員会、新党大地、維新の党道総支部、社民党道連が支援)と現職の高橋はるみ氏(61、自民党道連、公明党道本部推薦)が参加したが、2人がこうした公の場で顔を合わせ討論するのは初めて。26日から始まる選挙戦を前に互いに主張をぶつけ合い、さや当てが続いた。会場は一触即発の張りつめた雰囲気が漂う場面もあって選挙戦での盛り上がりを予想させる雰囲気だった。(写真は、道新ホールで行われた知事選公開討論会)
定員700人のホールにはところどころ空席がありほぼ7割の入り。2人が司会の田辺靖道新報道センター長が投げかけた11の質問に持ち時間を目いっぱい使って答え、公約を主張した。互いの発言が終わると佐藤氏と高橋氏を支持するそれぞれの参加者たちから拍手が沸き起こり、発言の途中では時折大きな声で野次が飛ぶなどこうした討論会ではあまり見かけない光景が繰り広げられた。
ヒートアップする聴衆に比べて壇上の2人は淡々と持論を展開したが、最初に相手の発言に異を唱えたのは高橋氏だった。佐藤氏が一次産業の付加価値例として増毛で行われているエビを新鮮なまま輸送する方法について示した後、高橋氏は「それは活ジメで付加価値ではなく輸送のひとつの方法」と反論。それに対して佐藤氏は「何も二次加工、三次加工ばかりが付加価値ではない。一時出荷でも付加価値を付けられる。付加価値に対する知事の認識は甘い」と切り捨てた。
以降も、「道内市町村長の中には『知事がなかなか会ってくれない』と不満を口にする人がいる」(佐藤氏)と言うと、佐藤氏が道には企画力がないと主張していることを念頭に置いたのか、高橋氏は「財政難でも道職員には企画力があるので行政がカバーできないところを民間企業との包括連携で補い、ウインウインの関係を創りあげている」とそれぞれの発言の中に相手の批判を織り交ぜて持論を展開する場面が目立った。
一問一答が終わり、候補者同士が互いに質疑応答する場面に移るとまさに丁々発止のやり取り。
佐藤氏が高橋氏に「原発問題をどうしたいのかスタンスを示して欲しい」と迫ると「軽い政策課題ではない。責任を持って判断していかなければならない」と従来の姿勢を崩さず、さらに佐藤氏が「それでは道民が判断できない。現時点ではどうかなのか」と問うと高橋氏は「答えは同じ」とサラリとかわした。
逆に高橋氏が佐藤氏の示した道内総生産を19兆円から50兆円にすることについて「ロードマップを聞かせて欲しい」と言うと、佐藤氏は「今、10歳の子供が30歳になった時に50兆円規模の北海道でありたいというビジョンだ。知事のメッセージとしてビジョンを示し道民が気概を持たないと発展しない」と返答。すると高橋氏は、「50兆円になったらいいな、という夢なんですね」と発言。それに佐藤氏は猛反発、「そんなに軽く言わないで欲しい。夢は実現するためにある。軽く言われることに憤りを感じる」と顔を赤らめんばかりの様子だった。
その後も、佐藤氏が片山善博元鳥取県知事の「知事任期は2期8年で十分やれる」との発言や細川護煕元首相が熊本県知事引退時に示した「権腐十年」を引用して高橋氏の4期目出馬に言及すると、高橋氏が「やりたいと言うことよりも私がやらなければならないという強い使命感から立起した。後は道民の判断です」とかわした。
経済、原発、エネルギー、一次産業、医療、子育て、教育、人口減、地方創生、交通、地方分権、行財政改革など様々な論点がある道知事選。2時間に亘った公開討論会では2人の政策とともに人となりの一端も垣間見えた。26日から始まる選挙戦を通じ、4月12日の投開票までさらに2人の政策論争が深まり、次の4年間を託せる知事選びの判断軸がより明確になるだろう。
(討論会終了後に、高橋氏が佐藤氏に駆け寄り握手)