函館市や滝川市、芦別市などで現職市長が相次いで敗れた4月24日の統一地方選後半戦。国や道への依存から脱却して、地域自らがマチづくりに取り組もうという転換点に来ていることを改めて印象付けた選挙結果だった。この胎動とも言える動きは、既に一部の町村レベルでは具現化してきており、市レベルでもその芽が出てきた。地方自治を研究している酪農学園大学の河合博司教授に統一地方選後半戦から何が見えてくるかを聞いた。
――現職首長が新人候補に敗れたり、現職後継候補が敗れるなど、4月24日の統一地方選後半戦は、波乱が多かった。
河合 既に東川町や訓子府町、ニセコや黒松内、余市などでは独自の行政展開を行い、全国に発信している。国や道への依存から脱却して足元を見つめなおしつつ、それぞれの特長を生かした住民参加のマチづくりが実際に行われている。
こうした町村レベルでの動きに比べて、地方の市レベルでは旧態依然とした国頼み、道頼み、公共投資依存の行政運営が行われているケースが多い。
しかし、今回の統一地方選の結果から、市のレベルでも旧態依然の行政から新しい動きを求める行政への転換点に立ったということがくっきりと分かった。いわば地元の良さを再認識して、それを生かしていこうとする内発的発展の芽と言えるだろう。
――橋下大阪府知事や河村名古屋市長は、議員定数や報酬削減など新しい問題提起をしているが、道内ではそうした動きは出ていない。
河合 大阪や名古屋のやり方は、私は大いに問題があると考えているが、連日マスコミが報じたことによって道内の有権者も選挙意識を触発されたことは確かだろう。
それは、行政を変えることができるという意識が出てきたということ。選挙民が自ら主体にならなくても現職以外、あるいは現職後継を選ぶのではなく、別の新しい候補者を選択することによって賭けてみようという思いがあったのではないか。
――統一地方選前半戦は知事選や札幌市長選で現職3選という結果になったが。
河合 前半戦は震災の影響が大きく、どうしても現職有利に働いたことは確かだ。道や札幌市では、住民自治や住民参加ということがなかなか具体的に現せないが、道議会議員や札幌市議選では変化の兆しが有権者の投票行動に現れている。
札幌市のような190万都市では、住民自治を実のあるものにするためには、行政区ごとに区長を公選制にするとか区ごとに議会を設けるなどする必要があるだろう。
いずれにしても、町村レベルの首長は、住民から学ぶことで行政感度が鍛えられている。道内の町村の中にはキラキラと輝いている自治体が散見されるようになっている。それが、市や道のレベルまで広がっていけば良いのではないか。