マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が、大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも、数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の2025年17回目は、白石区南郷通8丁目南の「エミネンス南郷」。(写真は、解体工事中の「エミネンス南郷」)
南郷通から1本入った仲通り沿いにあるのが、賃貸住宅「エミネンス南郷」。総戸数31戸のこの建物は、1979年8月に新築された鉄筋コンクリート造、4階建て、延べ床面積約558坪(1843・02㎡)。市内に数多い「エミネンス」の名を冠した賃貸住宅の一つで、近くには万生公園がある。建設当時は、地下鉄東西線が白石駅までしか通っておらず、1982年の新さっぽろ延伸までは、バスが住民の足だった。
土地建物の所有者は、変遷をたどり、常口や常口都市開発から道外の不動産会社を経て、2017年6月に現在の所有者である松本塗装工業(本社・札幌市豊平区)に所有権が移った。解体工事は、2025年6月23日から始まっている。解体工事の注文者は松本塗装工業、解体業者は有限会社北海道リサイクラー(同市清田区)。解体工事は2025年9月30日までとなっている。土地面積は約280坪(926・60㎡)。住宅地の一角に建っていたありふれた建物だが、31戸には固有の物語が詰まっていた。46年間にわたって紡がれた役割が終わり、土地は新たな役割を担って次の時代へと向かう。