釧路市中心市街地に20数棟あるとされる空きビルの一つ、旧「丸ト北村百貨店」が空き家対策特別措置法に基づいて2024年度に解体される。4億円程度の解体費用のうち、補助対象になる約3億円について国や釧路市が5分の2ずつ、所有者が5分の1を支出するもので、釧路市では、この特別措置法適用による空きビル解体は初となる。(写真は、解体に一部公費が支出される旧「丸ト北村百貨店」)
釧路市北大通4丁目6にある旧「丸ト北村百貨店」は、地上6階、地下1階の鉄筋コンクリート造。ルーツは1906年創業の呉服店で、1967年に百貨店として営業を開始、旧「丸三鶴屋」(後に丸井今井が子会社するが、2006年特別清算)と並ぶ釧路を代表する百貨店として営業していた。しかし、200カイリ規制などの影響で地元経済の低迷を受け、1978年に和議を申請、その後営業を再開したものの2000年に廃業した。
旧「丸ト北村百貨店」の建物は、20数年間にわたってそのまま放置され、外壁の落下など危険な状態になってきたため、市は所有者と交渉を重ね、空き家対策特別措置法に基づく空き家対策総合支援事業補助制度による特定空き家除却費用として、公費を支出することになった。
国が定める解体補助単価に、対象床面積を掛けた額の内、国と釧路市が5分の2ずつ、所有者が5分の1を支出する内容となっており、公費の総額は約2億円。解体費用全体は3~4億円とされ、残りは所有者が支出する。旧「丸ト北村百貨店」の土地・建物所有者は個人1人のため、権利調整が比較的容易だったが、中心市街地にある他の空きビルは権利関係が複雑で、今回のスキームが適用できるかどうは未知数。
蝦名大也市長は、「地価が都会と比べて安い地方都市では、空きビルの建て替えがなかなか進まず、中心市街地の課題になっている。地方都市に空きビルが多いのは、そのままの状態にしておくことが、所有者にとってコスト負担が最も少ないからだ。空きビル対策を進めていくには、公費を使って解体した場合に、所有権の一部を地方自治体に譲渡するなどの法改正が必要ではないか」と話している。