マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の24回目は、白石区菊水5条2丁目の「エア・ウォーター札幌菊水事業所」。(写真は、解体工事が進んでいる「エア・ウォーター札幌菊水事業所」)
解体ノート22回目で紹介したエア・ウォーター北海道の本社が入っていた「エア・ウォーター北3条ビル」(中央区北3条西1丁目)の解体工事と並行して、「エア・ウォーター札幌菊水事業所」の解体・工事も進んでいる。南郷通沿いにある同事業所は、エア・ウォーター北海道の一つのルーツとなる北海酸素(のちに、ほくさんに社名変更)の創業の地でもある。1929年、札幌商工会議所のメンバーが中心になって医療用酸素や産業用酸素の供給を目的に、この地に毎時30㎥の酸素製造機が稼働を始めたのが始まり。
戦中、戦後、高度成長やバブル、リーマンショックなどを経て「ほくさん」、「大同ほくさん」、「エア・ウォーター」へと姿かたちを変えてきた。そうした変遷を経ても、同事業所は創業以来の拠点として役割を果たしてきた。しかし、創業から90有余年、同事業所は東区北8条東8丁目4-1に移転、この地での活動を終えることになった。
解体工事は「南棟」と「北棟・研修センター」に分けて行われており、「南棟」の解体は2021年11月末から始まっている。解体の元受業者はコンステック(本社・大阪市中央区)の札幌支店(札幌市中央区)。「北棟・研修センター」の解体は、2022年2月中旬から始まっている。解体業者はホリイ(同市東区)。いずれの解体工事も今年7月末まで続く。
長方形の敷地は、1000坪を超える面積がある。土地は2021年10月、セントラルリーシングシステム(本社・同市中央区)が売買予約をしており、更地になって以降、土壌汚染対策が終了した時点で所有権が移りそう。セントラルリーシングシステムは、マンション開発やオフィスビル開発、商業施設開発などを展開している。ほくさん創業の地は、どう生まれ変わるだろう。