マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の13回目は、札幌市豊平区美園9条8丁目2-1の「国家公務員旧美園宿舎」。(写真は、解体工事が始まった「国家公務員旧美園宿舎」)
月寒公園坂下駐車場の向かい側に建っていた国家公務員旧美園宿舎。1968年頃に建てられたこの宿舎は、2011年に国家公務員宿舎月寒東住宅の完成になどによって、その役目を終えた。4階建てと3階建ての2棟が建っている敷地は、面積約1276坪(4213・50㎡)。地下鉄美園駅から350mと利便性がよく、22haの月寒公園と隣接していることから、北海道財務局は、2019年11月に札幌市内にある他の国有財産5ヵ所とともに、留保財産に決定している。
留保財産とは、有用性が高く希少な国有地について、所有権を国に留保し、定期借地権で貸し付けを行い財産収入を確保しながら有効活用を図ることにした財産のこと。2021年3月には、留保財産の利活用に関して不動産業や小売業、医療・福祉関連6グループにサウンディング型市場調査を実施。その結果、旧美園宿舎跡地には、社会福祉施設やドラッグストア、100円ショップ、ドライブスルー付きカフェなどの事業アイデアが寄せられた。
こうした意見を踏まえつつ、建物の解体工事が今年8月から始まった。解体工事の期間は2022年3月11日まで、発注者は北海道財務局、受注者は西出興業(赤平市)。
道財務局では、サウンディング調査の結果を受けて札幌市などとの協議を継続的に行い、今後利用方針案を作成、国有財産北海道地方審議会に諮問して利用法を決定する。その上で、公共随意契約または二段階一般競争入札(土地利用等の企画提案を審査して、審査通過者を対象に価格競争による入札を行うこと)により貸付先を決める。
同時期に留保財産に決定した札幌市南区川沿10条1丁目の約3626坪(1万1968・12㎡)は、6月に行われた国有財産北海道地方審議会で、社会福祉法人や学校法人など公的利用を優先することが決まった。旧美園宿舎跡はどんな利活用へと進むだろう。