マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の7回目は、札幌市白石区南郷通15丁目南2—12の「ロイヤルホスト南郷店」。(写真は、解体工事が進んでいる「ロイヤルホスト南郷店」)
厚別区と札幌中心部を結ぶ南郷通は、小さな高低差が意外に多い道路。車で走るとそのことを実感する。南郷18丁目から南郷13丁目にかけても、なだらかな登り坂と下り坂が交互に現れる。「ロイヤルホスト南郷店」は、月寒川の東側にあって、この区間で最も低い土地の上に建っていた。
オープン時期は、1980年代の後半。昭和が終わり、平成に入る頃で、ファミリーレストランは活況を呈していた時期だった。それから30数年が経ち、外食産業を取り巻く環境は大きく変わった。そこに押し寄せたコロナ禍の逆風。平成を駆け抜けた同店は、2021年3月31日、令和の初めに役割を終えた。南郷通に溶け込んだ当たり前の風景が、時の歩みを止めた。
閉店から4ヵ月、建物の解体工事が始まった。解体を行っているのは松平産業(札幌市白石区)、工事期間は7月10日から同月31日まで。30数年の歴史が詰まった建物が間もなく消える。
跡地には、ミサワホーム北海道(本社・札幌市白石区)が、地上15階建て、40戸のマンション建設を予定している。着工は、21年9月1日頃。ファミリーレストランから分譲マンションへ、土地の主役が交代する。