道警の元総務部長佐々木友善さん(66)が、道警の報償費を利用した裏金作りに関する書籍で名誉を毀損されたとして、北海道新聞社と同社記者2人、本を出版した講談社、旬報社に損害賠償などを求めた訴訟で、原告、被告の双方が10月26日の札幌高裁判決を不服として上告した。
この裁判は、2006年5月に佐々木氏が提訴したもの。道新取材班の著作による「追及・北海道警『裏金』疑惑」(講談社文庫)と同班らの共著「警察幹部を逮捕せよ!泥沼の裏金作り」(旬報社)の2冊の中にある佐々木氏の裏金対応に関する4カ所の記述部分が名誉毀損に当たるとしたもので、道新と書籍を書いた道新記者2人、出版社らに慰謝料600万円と本の回収、道新への謝罪広告の掲載を求めていた。
佐々木氏の提訴から3年後の09年4月に出た札幌地裁(竹田光広裁判長)1審判決では、記述の一部を「真実と認めるに足りない」として、全被告に計72万円の賠償を命じ、本の回収や謝罪広告については認めなかった。判決では原告・被告の訴訟費用について原告が9割を負担するものとした。
この一審判決に、原告、被告の双方が控訴。今年10月26日の控訴審(井上哲男裁判長)判決では、一審判決をそのまま踏襲、原告勝訴となったものの、訴訟費用についてはそのまま原告が9割を負担せよというものだった。
高裁判決を不服としてまず上告したのは道新記者2人と出版社の2社。11月6日のことだった。それから2日遅れて道新が上告。そして上訴期限ぎりぎりの2週間目に原告の佐々木さんも上告した。
訴訟費用は、被告の道新記者2人のうち、1人がロンドンに駐在していたし、もう1人も東京支社に勤務していたため、札幌での証人出廷のためには航空運賃などを含めて総額700万円程度とされている。一審、二審ともに訴訟費用の9割程度を勝訴した原告が支払うように判決文に記しており、原告は名誉を回復しても金銭的には敗訴した被告側よりも多大の出費が必要となる。
佐々木さんは、上告理由として書籍に書かれた4つの記述部分のうち1ヵ所の【「いやいや、どこまでやられるかと思ったよ」。もちろん笑顔だった。】について一審、二審にも判断されなかったことと、この訴訟費用の割合を上げている。
佐々木さんが、道新への抗議を開始したのは04年ころから。今年で6年になる。最高裁の判断が示されるのかどうかは分からないにしても、決着までにはさらに年単位の期間が必要になってくる。
(写真は佐々木友善氏)