【新店の研究】「コープさっぽろとっとり店」(釧路市)~立地のハンディを跳ね返すモデル店に~

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 コープさっぽろ(本部・札幌市西区)が、日本製紙釧路工場隣接地に開業した大規模ショッピングセンター(SC)「ジョイフルタウン釧路」(釧路市鳥取南4丁目4-10)内に、「コープさっぽろとっとり店」をオープンさせてから1ヵ月半が経過した。オープン景気も一段落し、店舗運営の課題も見えてきた。ディスカウントスーパー(DS)が多い釧路で、コープさっぽろの独自性をどう浸透させていくかが必要になっている。(写真は、2025年8月28日にオープンした「コープさっぽろとっとり店」)

「コープさっぽろとっとり店」は、コープさっぽろにとって「新橋大通店」以来、釧路市内では14年ぶりの新店。売り場面積は「コープドラッグ」を含めて約650坪、最新MD(販売政策)を盛り込んだ標準スペックの店舗となっている。「ジョイフルタウン釧路」では、「ジョイフルエーケー釧路店」が2025年7月23日に最初にオープン、以降、8月22日の「テックランドジョイフルタウン釧路店」、8月28日の「コープさっぽろとっとり店」、9月5日の「無印良品ジョイフルタウン釧路」まで段階的にオープンが続き、とりわけ釧路では、20数年ぶりの復活出店となった「無印良品」のオープンには多くの人が詰めかけ、「コープさっぽろ」も買い物客で賑わった。

(写真は、惣菜売り場)

 こうしたSCのオープン景気も一段落、固定客の獲得に向けた課題が見えている。立地的には必ずしも良くない。操業を停止した日本製紙釧路工場の隣接地のため、周囲は工場が多く、足元商圏の定住人口は少ない。「現状は、広域集客型の『無印良品』のお客が流れてくる場合が多く、買いものパターンはコンビニと同様で、グローサリーや調味料、和・洋日配品の売れ行きが鈍い。地域住民の冷蔵庫代わりに使ってもらいたいが、今のところ、そういう使われ方をしていない」と安藤丈志店長は冷静に分析する。

(写真は、青果売り場)

 流れ客を固定客にする販促が必要だが、それを可能にする一つの要素が、釧路の買い物パターン。釧路には、「ザ・ビッグ」「スーパーセンタートライアル」などDSが多く、買い物客は価格に敏感。価格によって買い回りをするお客も多く、店舗ロイヤルティーは、それほど高くないという。「とっとり店」から2㎞圏内にある「イオンモール釧路昭和」の近隣は新興住宅街で、家計支出には、よりシビアな地域とされる。「とっとり店」では、生鮮食品を中心に特売価格を打ち出し、こうした買い回り客を集めて、組合員加入を呼びかける販促を行っており、一定の手応えを掴んでいる。また、釧路のコープさっぽろ店舗では初の「トドックステーション」も開設、子育て世帯のコミュニティ形成という役割もアピールする。

(写真は、釧路のコープさっぽろ店舗初の直営ベーカリーコーナー)

「価格である程度のお客を呼び込み、組合員になってもらった上で、コープさっぽろのポイントプログラムの優位性や灯油や電力など、グループシナジーを地道に訴えたい。暮らしをまるごとお手伝いできることを知ってもらい、他のスーパーとの違いを浸透させたい」(安藤店長)。

(写真は、釧路港で水揚げした魚が並ぶ鮮魚売り場)

 商品構成での違いもアピールしていく考えだ。その一つが惣菜部門。コープさっぽろの強みは、惣菜類をバックヤードでインハウス製造している点。近隣のスーパーでは、惣菜類の多くをPC(プロセス)センターで製造しており、「近隣店舗より、惣菜の棚は2つ多くて種類も豊富。出来たて、揚げたてのおいしさで差別化を図っていきたい」(同)。

(写真は、道産チーズのコーナー)

 安藤店長は、以前、旭川のコープさっぽろ店舗を担当したことがある。旭川もDSが多く、価格に敏感な買い物客が多いことで知られる。「旭川では、競合店のDS化やDSの新店で苦戦を強いられた。その時、基本を徹底することで買い物客の固定客化に結び付けることができた。この教訓を、この店舗でも生かしていきたい」と話す。「とっとり店」のオープンに伴って、コープさっぽろの近隣既存店2店舗の売り上げ減も予想されたが、今のところ自店競合による落ち込みはなく、コープさっぽろ3店舗の棲み分けができている。「現状では売り上げ目標の18億円まで届かず、15~16億円になるだろう。基本を徹底することで、3年後には目標額をクリアして、地域一番店を目指したい。その伸びしろは十分ある」と安藤店長は、自信を示していた。

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