2024年11月14日にオープンした「コープさっぽろぬまのはた店」(苫小牧市北栄町1丁目17-26)は、チャレンジと地域密着の思いが詰まった店舗だ。新店は、買い物客の注目を集めるのは当然だが、最も必要なことは、お客の支持を継続的に得ること。必要なことは、スーパーマーケット(SM)に求められる、オーソドックスさとワクワク感を演出するチャレンジングな姿勢とのバランスだ。「ぬまのはた店」は、このバランスを組み替えようとする意欲的店舗のようだ。(写真は、2024年11月14日に行われた「コープさっぽろぬまのはた店」のオープニングセレモニー=コープさっぽろ提供)
「お客さまがワクワクするようなお店にしたい」。コープさっぽろ(本部・札幌市西区)の鈴木裕子常務理事は、店頭に立ちながらこう話す。その思いが詰まっているのが、ベーカリーやスイーツ、惣菜などの売り場だ。鈴木氏は、農産や水産、畜産の各売り場の垣根を超え、各売り場が扱う新鮮な食材を使って、惣菜をインストア製造する「大惣菜化プロジェクト」やオリジナルスイーツブランド 「トヨヒコ」「いなぞう」の展開を進めてきた。「前へ前ヘとチャレンジする人」とは、多くの業界関係者の評だ。
(写真は、網焼きで提供する「炎の網焼き」売り場)
(写真は、祐太郎商店と名付けた水産練り製品売り場)
コープさっぽろの新店としては1年半ぶりだが、苫小牧地域では、コープさっぽろと道央市民生協の統合(2006年)以来、初めての新店ということもあって、この店を最先端のSMと位置付けている。そのためか、“初物づくし”とも言えそうな取り組みがいくつもある。
苫小牧地域にあるコープさっぽろの店舗としては、初のインストアベーカリーを手掛け、スコーンやベーグルを全店舗の中で初めて手掛ける。青果コーナーでは、旬のカットフルーツを小容量カップで揃え、3つで500円(税抜き)の「ちょこっと選べて楽しいフルーツ」を初展開。惣菜コーナーは、鶏モモや鶏ハラミ、砂肝、ハツ、合鴨を炭の網焼きで提供する「炎の網焼き」を初めて導入。店内で切るローストビーフを使った「ローストビーフタワー寿司」、「祐太郎商店」と命名した店内製造の水産練り製品も初めての取り組み。
(写真は、「さくら食品」のアイスが揃った冷食コーナー)
(写真は、店内の様子)
水産コーナーでは、サラダにお造りをトッピングした「お造り海鮮サラダ」も初めて揃えた。冷食コーナーには、コープの離乳食「きらきらステップ」シリーズの棚やコープさっぽろグループのさくら食品(小樽市)のアイス商品の専用棚も設けた。
地域密着では、近郊農家で採れた野菜を揃えた「ご近所野菜」コーナーのほか、市場で買い付けた鮮魚を販売する「苫小牧市場直送コーナー」を新設、千歳ワイナリーのワインや支笏湖ビールの地ビールも各種揃え、苫小牧市内の老舗菓子店、協和製菓の煎餅なども揃えた。店舗内には、約24坪の「トドックステーション」も併設、壁には、苫小牧港や新千歳空港をイメージしたイラストを施し、キッチンも備えている。地域の子育て世代に開放し、気軽に立ち寄れるようにしている。
オープン時には、約300人が行列をつくり、開店を待ちわびた。前出の鈴木氏は、「毎日、お客さまには来てほしい。トドックステーションもあるので、立ち寄り場所としても利用してほしい」と話したうえで、「この店を地域一番店にしたい」と力を込めた。課題は、インストア製造の比重が高いことによる店舗運営コストの低減。手を掛ける分野と合理化する分野の徹底力が、あらためて問われそう。ワクワク感を継続するための新商品開発力も求められる。店内は、初物づくしの取り組みが多い割には、前のめりにはなっていない売り場の安定感があった。
■延べ床面積約973坪、売り場面積約598坪(コープドラッグ含む)。パート・アルバイトを含めた従業員約100人。屋上には、コープさっぽろの店舗では、最大発電規模のソーラーパネルを設置、店舗で使用する電力の10~15%分を想定している。営業時間9時~22時、駐車台数185台。