東京証券取引所プライム上場、ツルハホールディングス(以下、ツルハ、本社・札幌市東区)の筆頭株主であるイオン(本社・千葉市美浜区、保有比率13・59%)は、第2位株主の香港ファンド、オアシス・マネジメント・カンパニー(以下、オアシス、保有比率12・84%)が保有するツルハ株式を取得する独占交渉を開始した。(写真は、札幌市東区のツルハホールディングス本社)
成立すれば、イオンのツルハ株式保有率は25%を超えて持ち分法適用会社にすることができ、イオンが50・54%を出資する連結子会社、ウエルシアホールディングス(本社・東京都千代田区)との合併へ進む可能性がある。
ツルハは、昨年8月の株主総会でモノ言う株主、オアシスに飲まされそうになった煮え湯の教訓から、MBO(経営陣による買収)による非上場化を検討してきた。MBOの検討をしたのは、イオンとの関係も微妙だったから。ツルハとイオンの関係は、1995年から始まったが、当初の蜜月から現在は冷え切った状態になっている。
ツルハは、いずれイオンがオアシス保有のツルハ株式取得に動くとみて、MBOを選択肢の一つにしてイオンに揺さぶりをかけていた。イオンにとって、ツルハを丸ごと買収するとなれば、現在のツルハの時価総額約6200億円にプレミアムがついて8000億円程度が必要。しかし、イオンにはそれだけの資金力がない。
イオンにとって、ドラッグストア再編は重要な経営課題であり、何としてもツルハを自家薬籠中のものにしたいという思いが強かった。そこで、繰り出したのがオアシス保有株の取得という資本政策。取得費用は800億円から1000億円程度とみられ、丸ごと買収する費用に比べて10分の1でツルハを持ち分法適用子会社にして、傘下に収めることができる。
ツルハは、中小ドラッグストアのM&Aを繰り返し、創業家が経営の主導権を維持して成長してきた、いわばM&A巧者。その巧者が導き出したのが、MBOによるイオングループ離れだった。MBO資金の調達にはめどがついていたようだが、首脳陣はそれを決断できなかった。ツルハは、今回のイオンの動きについて「コメントする立場にはない」としている。第2幕、第3幕はあるのか。