アークス横山清社長、2024年新春インタビュー②「後継者問題、物流問題との向き合い方」

流通

 2024年が明けた。景気は良くなるのか、現状維持か、調整局面かーー見通せない状況だが、個人消費の動向をストレートに反映する食品スーパーマーケット業界は、どう動くか。この業界に入って63年目というアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(88)の本音に迫る、本サイト恒例の新春インタビュー2回目を掲載する。(写真は、アークス・横山清社長)

 ーー横山社長は今年、数えで90歳になりますね。後継者については。

「2023年の株主総会でも、『社長はいつ辞めるのか』という発言が無かったわけではない。役員研修会では、長期的な経営について討論するが、昨年は私の年齢に関することが討論されたこともある。私は、そうした発言が役員研修会で出てくるのを待っていた。それをベースにして話し合ったが、いろいろな意見が出た」

「アークスに加入したことについて、私の考え方と実績、実行力を見込んで参加した企業が過半だった。それで安心しているわけではないが、問題点を抱えているスーパーは大手も含めて多い。そういうところの株主が代わったからといって、すぐに業績が良くなることはあり得ない。今ある状況を、どの時間軸でグループの先頭を走っている企業と同じようなレベルまで持っていけるか。規模もさることながら、売り上げに見合うような最低の利益をどうやって出していくか、これは状況によっていろいろ違う。こうやれば、業績が回復して利益が出るなどという特効薬などあるわけがない」

「アークスを設立した時は、『あんなもの』と言われたけれども、純粋にスーパーマーケットの分野ではベスト5に入っている。今も、発展途上なんですよ。(最近は、アークス入りする企業が少ないため)休んでいるのかとか、できないのかとか、いろいろな見方があるが、私はどう見られたって良いと思っている。投資家と言われる信託銀行や証券会社などから、そうしたことを言われるが、彼らの言っていることをそのままやっても失敗するケースだってある。加えて、アクティビストの中には、口では投資家のため、お客さまのためと言いつつも、安く買って高く売ることしか考えていない者たちもいる」

「今のスーパー経営者で本当にお金に苦労した人は、どれくらいいるでしょうか。私たちの世代は、金ひとつ借りるのにどんなに苦労したことか。だから逆に言うと今が、(金に苦労した私の)チャンスかもしれません。だから辞めないんだよ(笑)」

 ーースーパーマーケット業界では、物流の「2024年問題」を見据えた課題解決に向き合うところが多い。

「物流業界では、全国大手の日通などでさえ大変な状況なのに、自前化や共同化で対応しようとしても、それは一筋縄ではいかないだろう。私たちも業者と協力しながら対応している」

「共同化もハードルは高いと思う。共同化というのは、ある意味で、いいとこ取りをすること。一社でやるよりも、数社が組めば物量が増えてコストが下がるという考えだが、最前線の店ではけんかをしていても、店舗に商品を持っていくのは一緒だと。どう考えても物流費がそれで2割、3割と安くなることはあり得ない。理想通りにいったとしても、せいぜい1割のコストダウンになるかどうかです」

「1割だって大きいが、物流コストの競争自体が店頭における価格競争に直結する問題だ。店頭での価格競争、信用度競争をしながら、裏では手を組むというのは、私の概念では成り立たない」

「物流問題は、目先の問題だけでは済まない構造的な問題を含んでおり、共同化による対応だけでは難しいのではないか。一番難しいことをクリアすることによって、革命があり、新天地があるというが、今の共同化の向き合い方は、前提として、この状況が元のような状況に変わった場合は、お互いに前のやり方でやりましょうね、という姿勢で向き合っているように見える。私の認識は、基本的に状況が全く以前と変わってしまっているということであり、(共同化は)それに向けての根本的な解決策とは言えないのではないか」

「都市部はまだ人がいて良いが、地方では買う人も少なくなっていく状況で、スーパーマーケットを持続的に展開していくにはどういう方法があるのか。店頭ではけんかをして、裏では手を組んで危機を脱しようとしても、将来性は見いだしにくい。物流は戦う武器。店頭という戦場では互いに戦うけれど、戦う武器は共有ですよ、ということはあり得ないのではないか」(続く)

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