2024年が明けた。景気は良くなるのか、現状維持か、調整局面かーー見通せない状況だが、個人消費の動向をストレートに反映する食品スーパーマーケット業界は、どう動くか。この業界に入って63年目というアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(88)の本音に迫る、本サイト恒例の新春インタビューを複数回にわたって掲載する。(写真は、インタビューに応じるアークス・横山清社長=2023年12月26日)
ーー2024年の食品スーパーマーケット業界をどう占いますか。
「食品スーパーマーケット業界は今、オーバーストア、オーバーカンパニーの状態にあることは間違いない。まさかのコロナによって特需があったが、特需の後には必ずその反動がくる。実際、今は食品の相次ぐ値上げによって表面的に売り上げはカバーされているが、現実にはこれは見せかけのものであって、本質的に格差がつき始めている。好調と言われているスーパーであっても、格差に晒されている企業はあるとみている」
「米国では、コロナの政府支援で過剰に積み上がった個人の預貯金が底をつき始めたと言われている。インフレなど景況に対する危機感はもっと高まるのではないかと言われている。私は、まさしくそういう景気の読み方を、日本でもコロナが始まった時からしていた。それに加えて、全てのコストが相当に上がってきている。コストが上がるに連れて、不動産も上がってきているが、これらはいずれ調整の局面を迎えるだろう」
「バブルの頃に、数十億円で建設したGMS(総合スーパー)の店舗が、バブル後には数千万円レベルになった例を実際に私は経験している。そうなることを待っているわけではないが、私はオーバーストア、オーバーカンパニーの状況は調整されていくだろうとみている」
「私は、何年も前から、将来的な食品スーパーは、オンラインとオフラインが半々くらいになるだろうと言ってきた。そうした中でも、店舗があるということは、お客さまにとって絶対必要なこと。行っても行かなくても、『あの店がある』という安心感のようなものが大切だ。アークスは、オンラインを小さく生んで大きく育てようとしている。『さあ、オンラインを始める』とセンターをつくったり、システムに先行投資したりすることはしない。そうした先行投資をすれば、オンラインにかかわるコストは下がるだろうが、それ以上に設備や土地を取得するコスト上昇のペースの方が早い。家賃などが10%も上がったらとんでもない話になってしまう」
ーー道内のスーパーマーケット業界は、「イトーヨーカドー」の閉店が具体化する2024年を機に再び流動化するでしょうか。
「当然、変化はするでしょう。しかし、変化をさせる方もひょっとしたら大変化に見舞われるかもしれない。今、ディスカウンターがお客さまから支持を受けていると、がんがんやっているが、ディスカウンターが良いからと言っても、永遠に続くかと言ったらそうではない。もちろん、永遠に続くことはどんなことにもないわけだが、今の流通環境から言うと5年レンジくらいで、『あれほどのところが…』と言われるところが潰えてしまう状況の可能性はあると思う。このあたりをどう見るかだ」
「アークス設立は、偶然ではなく、北海道拓殖銀行の破綻を一つの糧として、(スーパー業界でも)必ずそうした状況が来るだろうと誕生させた。大事な時に、しっかりとした投資ができるような企業の財務体制も含めて、構築するための手段をつくろうと、純粋持ち株会社のアークスを設立した。設立から22年目になる私たちも、次の段階に行くために、さまざまな形態を模索している」
「グループ全体でキャッシュは現在、約800億円くらいある。これによって3000億円ほどの投資は無理なくできる状況だ。足し算の成長からすれば、ある意味では私たちが今やっていることは、まどろっこしいというか、イライラするように見えるかもしれない」(次回に続く)