イオン北海道(本社・札幌市白石区)、トライアルホールディングス(同・福岡市東区)、北雄ラッキー(同・札幌市手稲区)、西友(同・東京都武蔵野市)の小売4社は2023年5月18日、アイアイ・テー(同・石狩市)など物流5社と「北海道物流研究会」(事務局・イオン北海道)を発足させた。(写真は、「北海道物流研究会」の発足会見。左から北雄ラッキー・桐生宇優社長、イオン北海道・青栁英樹社長、トライアルホールディングス・亀田晃一社長)
トラック運転手の運転時間上限規制など2024年問題に対応、北海道で総合スーパー(GMS)やスーパーマーケット(SM)を展開する4社が、地方配送の効率化やセンター共有化などについて協議、検討する。早ければ年内にも、地方配送の共同化を進める。
2024年問題は、小売業界にとって喫緊の課題。これまでは、小売業界が物流業者を選別する比較優位な立場だったが、2024年以降は物流業界の働き方改革、人手不足から、物流業界が小売業者を選別する時代になると言われている。もっとも、長距離輸送が必要な北海道では、物流業者が少ない荷物は運べないとして地方の小規模スーパーが廃業したり、大手グループ入りをしたりするなど、物流事情が小売再編を促してきた面がある。
小売業者はこれまで、特売日の前日に商品発注を行うなど、発注から納入のリードタイムを短くするように物流業者に求めたり、納入した商品を店舗に搬入することまで業務としたりするなど、業務分担があいまいな部分があった。働き方改革や2024年問題に向けて、各小売業者は物流との向き合い方を変えざるを得なくなっている。
1週間前の発注など、計画的な納品に切り替える自助努力で対応できる部分もあるが、自助努力では対応できないのが配送。今回の北海道物流研究会は、センターから各店舗への配送効率化を目指したものだ。具体的には、地方配送の効率化と地方センターの共有化などについて分科会を設け、今後は週1回の会合で短期集中で課題解決を目指す。配送の半分近くを占める生鮮食品への対応や定温、常温、チルド、フローズンの4温度帯への対応も協議する。フラットな関係とするため会長や副会長などの三役ポストは置かない。
加盟4社のうち札幌圏に店舗が集中している西友以外は、地方にも店舗が多い。イオン北海道は、釧路、厚岸、根室など、北雄ラッキーは、稚内、網走、紋別など、トライアルは、釧路、北見など店舗が広範囲に分散している。こうした地方配送について、年内にも共同配送の実証実験を行い、センター共有化に繋げる。将来的には、仕入れ調達の一次物流、保管等の倉庫業務、店舗配送の二次物流といった、サプライチェーン全体の生産性向上に取り組むことを視野に入れており、メーカーや食品卸の協力も仰ぐ考え。
小売業界は、利益の源泉を商品原価に求めることが長く行われてきた。これからは、物流などロジスティクスが利益の源泉になる領域に入ってくる。2024年問題に端を発する小売業の物流改革は、利益の源泉をロジスティクスに求めるという流れの中で、改革がさらに加速する可能性がある。
この日、札幌市中央区のロイトン札幌で行われた発足式で、イオン北海道の青栁英樹社長は「小売はライバル同士だが、物流面は共通課題が多い。共通課題を抱える仲間として、課題解決に取り組み、北海道の小売物流の効率化を図っていきたい」と話した。北雄ラッキーの桐生宇優社長は、「共有できるところは共有して、業界を前に進める努力を行わなければならない。九州や関東でも同じような研究会がスタートしているが、動きが早く、内容も具体的で小売の物流改革の試金石になるだろう。北海道でも多くの賛同者を集めて成功させたい」と語った。
また、トライアルホールディングスの亀田晃一社長は、「昨年8月に、九州でイオン九州とトライアルが一緒になって13社で同様の研究会をスタートさせ、少しずつ結果が出ている。トライアルグループにとって、九州の次は北海道が大切な地盤。競争するところは競争し、共同でできるところは共同で取り組みたい。メーカーやベンダー(卸)も入って進めたい」と話した。