イトーヨーカ堂創業者でセブン&アイ・ホールディングス(本社・東京都千代田区)名誉会長の伊藤雅俊さんが3月10日、老衰のため98歳で死去した。生前、親交のあったアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(87)に伊藤さんの思い出などを聞いた。(写真は、アークス横山清社長)

「伊藤さんとは、11歳離れているが、兄貴が亡くなったみたいな感じだ。お付き合いは、全国スーパーマーケット協会を通じてだったが、大手の中ではイトーヨーカ堂だけが会員として残ってくれて、伊藤さんはずっと会合に顔を出してくれていた。『あんたがいるから出席するんだよ』と言ってくれたのが、うれしかった」

「一昨年まで協会の会合には出席してくれたが、ある時、『あんたが好きだから来るんだよ』と言われた。滅多にそんなことを言う人ではなかったので、一緒に出席していた塙専務に聞いたら、『私も初めて聞きましたが、確かにそう言ってました』と」

「それで、協会の記念誌を作る時に、その話を書いた。結構厳しい人で、そういうことを書かれることを嫌がる人だったので、記念誌を伊藤さんに送ったが、何も言われなかった。ああ、認めてくれたんだな、とうれしかったね。伊藤さんに『あんたが好きだ』と言われた人はあまりいないと思う」

「親交が始まったのは、30年くらい前、キッコーマンの米国工場視察の時だった思う。式典でちょうど、私の前に座っていたのが伊藤さんで、声を掛けたのが最初だった。帰国してから会うたびに『やあやあ』と親しくなった。そのうちにスーパーマーケットトレードショーにも来てくれるようになった」

「メーカーの海外工場視察などは、夫婦で出席する場合が多く、やがて伊藤さんの奥さんと私の女房も仲良くなって、奥さん手作りのジャムや漬物を送ってくれるようになった。家族ぐるみで親交ができ、私の娘は伊藤さんの奥さんが作るジャムが大好きだった。10年間くらいやり取りがあった」

「イトーヨーカ堂に見習いたいのは、人づくりだ。教育もきちっとしていて、幹部には上から目線の人があまりいない。だから、ヨーカ堂出身の幹部はいろんなところで活躍している。人づくりは、今も見習うべき点だと感じている」(終わり)


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