2023年が明けた。コロナは4年目に入り、ウクライナ問題、インフレ、SDGsなど、さまざまな課題が逆相乗効果を引き起こす状況が今年も続く。荒波の中で、希望の羅針盤となるのが、先達の時代を読む眼だ。食品スーパー、アークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(87)は、食品スーパーという生活に密着した業界に60有余年身を置きながら経済の変化を直に経験してきた。横山社長が読み解く2023年とは、どんな1年なのか。インタビュー2回目を掲載する。(写真は、アークス・横山清社長)

「私たち食品スーパーの使命の一つは、インフレと戦っていかなければならないことだ。お客さま第一主義ということで言えば、インフレと戦わずして何をやるんだということになる。今、インフレは起きている。そのインフレについて、納得できる価格については容認しても、納得できない価格については、今まで私たちが培った技術や力を使って、異業種といえども手を組んで、徹底的に対抗していく」

「今度のインフレで、例えばスーパーで売っているラーメン1玉が50円から70円になったとする。『とんでもない話だ』という見方がある一方で、外食を減らして1玉70円のラーメンを買い、お母さんの味として子どもたちに作ったり、珍しくお父さんがラーメンを作ったりして家族一緒に食べるきっかけになるかもしれない。このように、インフレがこれまでの価値感を変化させることだって十分に起こりうる」

「インフレによる価格上昇のうち、納得できる価格上昇の容認と納得できない価格上昇への挑戦を並行的に進めることで、私は新価格体系が生まれると考えている。労働力人口の7割は中小零細企業が占めており、大企業に勤める一部のリッチな人たちが容認する価格体系だけでは、成り立たない社会構造だ。私は、矛盾するようだけど、インフレにはしっかりと挑戦しながら、新価格体系を系統的、類型的に整えていかなければならないと考えている。私たちもインフレ傾向と言われるかもしれないが、お客が納得できるような価格体系をきちっとつくっていかなけなければならない」

「NB(ナショナルブランド)時代からPB(プライベートブランド)時代になる、と言っている経営者もいるが、私は関係するCGC(シジシー、共同仕入れ機構)でPBを実際に扱っている肌感覚で言えば、PB時代になることはないと思っている。商品の価値をNBがつくって、PBはその価値観を踏襲しながら安く感覚を提供する役割がある。そういうことを含めて、価格を上げるとか下げるということではなく、この商品はこういう役割機能があるからこの価格で(私たちが)納得して(お客に)提供しようとしたり、こういう役割機能がなくても良いから、画期的に安い価格で提供できる価格にしようとしたりするなど、新しい価値を系統的に整えていく考えだ」

「インフレに挑戦しながら新価格体系をアークスが打ち出し、私どもの商業施設をご利用いただくお客の幸福な生活の創出を目指していくことを進めていく。新しい価値観、価値変容は実際に進んでいるが、変容とは、端的に言えばチェンジ、変化だ。突き詰めていえば、チェンジ、変化にきちっと対応するだけのこと。最近は、最高のIT技術を使ってなどと難しいことを言っているが、そういうことではないんだ」(以下、次回に続く。構成・本サイト)



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