アークス(本社・札幌市)の横山清社長は、毎年新年のスローガンを自ら毛筆でしたためる。過去の分析と未来の洞察の一致点を見つけ出して紡ぎ出した2013年のフレーズは、『創発的破壊で成長を加速し地域密着を基に最強の連峰経営を築く』。食品スーパーのM&Aを繰り返して成長してきたアークスが新たな成長段階に入っていることは業界の共通した見方だが、『破壊』という言葉があるように、横山社長にとって今年はこれまでの延長線上にはないことを自らにも言い聞かせるようなスローガンになっている。(写真は、2013年のスローガンを指さす横山清社長)
横山社長が『創発』という言葉をスローガンに使いだしたのは2年前から。ノーベル賞を受賞したベルギーの化学者が創発現象という概念で化学を解いたことを引用し、創発現象が人間の社会にもあると見て横山社長はこの言葉を使い始めた。「人間一人ひとりの力は小さくても、ある瞬間に大きな力を引き起こす。例えは悪いが、戦争にしても革命にしても『創発』の力が作用している。人間集団が様々な動きをしているうちに瞬間的に次のステージに進むことを『創発現象』と言っても良いのではないか」と横山社長はその当時語っていた。
奇しくもその年の6月には青森県が地盤のユニバースとの経営統合を発表し9月には網走の篠原商店との統合も発表した。創発現象が生み出したM&Aを具体的な形として出した訳だ。
昨年のスローガンには創発という単語を用いなかったが『創』という一字は残し、新連帯を強調。そのスローガンを裏打ちするように4月に岩手県盛岡市に本社を置くジョイスと統合、2年連続でスローガン通りの結果を実績として残した。
こう見ていくと、横山社長が掲げる新年のスローガンには、その年に実現する事項が未来図のように暗示されているようだ。
で、2013年のスローガンを読み解くと、横山社長の胸中には明らかに今までの延長線上にはない新しいスタンダードの出現が去来しているようだ。アークス創業の原点だった地域の食品スーパーが大同団結する八ヶ岳連邦経営を軸足に置きつつ、新スタンダードで成長の舵を取る強い想いがしたためられている。
2013年の“横山劇場”にはどんな場面転換があるのか、観客ならぬステークホルダーや同業者の視線がその舞台に注がれている。