コープさっぽろ(本部・札幌市西区)と国内トップクラスのAI研究開発企業で北海道大学発ベンチャー、調和技研(札幌本社・札幌市北区)は1日、包括的な共同研究を行うことで合意した。店舗や宅配、共済など多岐にわたるコープさっぽろの事業分野に、どうAIを活用していけば生産性向上に結びつくかを検討、AI導入に効果が見込める分野を深堀りして実際に活用を進めていく。共同研究の期間を設けず長期的に取り組むことでAI活用を標準化、外販にも取り組むことを視野に入れている。(写真は、コープさっぽろの対馬慶貞・執行役員最高デジタル責任者CDO・デジタル推進本部長=左と調和技研の中村拓哉最高経営責任者)
AIは、様々な業界で生産性向上の切り札として注目されているが、多くは確立されたAIエンジンやAIアルゴリズムを応用した、言わば製品の応用展開。調和技研は、12年前に北大大学院調和系工学研究室の川村秀憲教授、鈴木恵ニ教授(現公立はこだて未来大学教授)らが中心になって設立した大学発ベンチャーで、AIアルゴリズムやAIエンジンといった「脳みそ」の研究領域で実績があり、こうした「脳みそ」を使ったAIプロダクト(製品)を企業に提供、ビジネス課題を解決してきた。
コープさっぽろは、事業にAIを活用することが不可欠として、同組合の技術顧問であるクラウドファーム(石狩郡当別町)の田名辺建人氏を介して北大・川村教授との知遇を得て、このほど調和技研と包括的な共同研究推進で合意した。コープさっぽろでは、まず役職員がAIについての知識や理解を深めるため、調和技研と共同で月1回の「AIディスカッション」を開く。各事業分野の責任者や大見英明理事長ら役職員も出席、50~60人規模で開催する。
こうしたディスカッションを経てAI導入の効果が見込める分野を抽出、コープさっぽろが蓄積している日々のデータを解析してAIエンジンなどの構築に結び付ける。既に宅配トドックの運行経路最適化について共同研究に入っている。ただ、成果を焦らず1~2年レベルでじっくり取り組み、最適なAI応用に育てていく考え。
両者が共同研究で開発したAIエンジンなどについては外販もする予定。また、期間を設けずに共同研究を進めていくことによってエンジニア育成の場にもなり、北海道でのAI研究の土壌が広がり、エンジニアのU・Iターンに繋がることも期待している。
コープさっぽろの対馬慶貞執行役員最高デジタル責任者CDO・デジタル推進本部長は、「AI導入によって作業の効率化を図るとともに、組合員が求めているものを効率よく提供できるようにしたい。こうしたAI活用によって職員と組合員がリアルに接する時間を多く取れるようにして、対面サービス向上に努めたい」と話した。また、調和技研の中村拓哉最高経営責任者は、「当社にはAI研究を実証できるビジネスフィールドがなかったが、今回の共同研究によって日々の新しいデータを生かして様々なトライができる環境が整う。期間の定めを設けていないため、大学の専門知識や数多くの事例、経験ノウハウを生かすことができる」と述べた。
調和技研の売り上げは年間4億円、社員数は51人、資本金は1億7325万円。