夕張市清水沢宮前町の「本間ストアー」が9月30日(水)で閉店する。創業から59年、人口減によって客足が遠のいたことや、冷蔵ケースの更新に多額の投資が必要なことから廃業を決めた。(写真は、9月30日で閉店する夕張市の「本間ストアー」)
(写真は、TAKUROとTERUの身長を記したサインが残っている冷蔵ケース)

「かつては炭鉱住宅が並び、小さな子どもたちのいる家庭が多く、一日中お客が途切れることはなかった」と、炭鉱で賑わっていた当時を振り返るのは、この店に勤めて45年になる菊地好夫さん(65)。精肉や鮮魚、青果、惣菜などを南清水沢卸売市場から仕入れて販売していたほか、日用雑貨も揃う約30坪の小型スーパーだった。

 一番の最盛期は、北炭夕張新炭鉱の事故が起きる前の1970年代で、年末になるとレジ2台に買い物客が店の奥まで並び、夏には大玉のスイカ3玉をセットにして販売すると、飛ぶように売れたという。「年末には1年の感謝を込めてタオルを周辺に配るのですが、その数は500軒を超えていました。家族を含めると多くの人が店の周りに住んでいました」と菊地さん。

 今では、こうした炭鉱住宅は建て替えられ、「宮前泉団地」として整備されているが、高齢者が多く子どもの数は数えるほどしかいない。最近では、1日の買い物客は30人にも満たず、持ち出しの状態が続いていた。

 20年前から店主を継いだ本間みはるさんは、閉店について「毎日、お客さまの顔を見るのが楽しみだった。それができなくなるのは寂しいですね」と話す。創業した80代の両親に閉店を告げると黙って頷いたそうだ。南清水沢卸売市場が閉鎖されてから、岩見沢市卸売市場に片道50分かけて仕入れをしてきた菊地さんは、閉店について「そろそろ潮時です」と淡々と語る。

 実はこの店舗には、人気ロックバント「GLAY」がほぼ毎年立ち寄っていた。夕張市が財政破綻した2007年以降、GLAYは夕張でコンサートを開くなど毎年夕張を訪れて支援している。その際には、必ず「本間ストアー」にも立ち寄っている。店内の縦型冷蔵ケースには、TAKUROとTERUの身長を記したサインも残っている。また、メンバーとの記念写真も数多く展示されている。

 本間さんは、「メンバーの方々には感謝の思いを込めて手紙で閉店のお知らせをしました」と言う。閉店後について、「(閉店は)本当に急に決めたので、まだ何も考えられません」と話していた。
(写真は、GLAYが立ち寄った際に撮った多くの記念写真の前で閉店について語る本間みはるさんと菊地好夫さん)



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