「ひとつの革命より1000の改善」「覇権主義でシェア重視の姿勢はとらない」横山清アークス社長が東北南下戦略を語る

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 アークスの横山清社長は21日、札幌証券取引所で今回のジョイス(岩手県盛岡市)統合や東北進出の考え方などについて会見した。横山社長は会見で、「覇権主義ではない」、「顰蹙を買うが救済型の統合はしない」、「ひとつの革命より1000の改善」など食品スーパーマーケットの新しい経営像について記者とのQ&Aを交えながら60分間話した。横山社長のナマの声を2回に分けて紹介する。(写真は、21日に札幌証券取引所で会見する横山清社長)
 
「覇権主義でマーケットシェアをどんどん広げてシェアを取るということではない。M&Aというのは合併吸収だが、私はこじつけで“マインド&アグリーメント”、志を同じくするものが誓い合って決めたものは守って目的を達成するという意味に捉えている」
 
「私は、この道(食品スーパー業界)に入って51年、会社を大きくするだけならとっくにリタイアしていなければいけない。この50年ずっと休むことなく、大きな歩幅ではないがちょこちょことやってきた。食品スーパーの中では、売上げで合算では4600億円になり全国2番手につき、利益では日本一になる。しかし、世界的にみれば日本のローカルの位置づけ。決して大げさなことは考えていない」
 
「大きければ良いということではないが、ある程度の規模がないといろんな問題、例えば人口が減るとかマーケットが縮小するとか、これにどう対応するんだということが出てくる。どんどん大きくなって弱小を蹴散らして王座をせしめるということではない。適正規模というのはいつも変わっていく」
 
「北海道は首都圏から見ると辺境の地。革新は辺境の地からという言葉もあるが、条件の厳しいところでシッカリとマーケットを見つめていかなければならない。食品スーパーという仕事は、特別の技術で飛躍的な発展ができない仕事。しかし、完全に需要が再生産される仕事でもある。どんなに頑張っても一ヵ月も食べないで生活することはできませんからね」
 
「これからどんどん人口が減ってくる。胃袋自体も小さくなっていく。北海道がどうだとか、東北がどうだとか言ってはいられない。高度成長した後のマーケットの中で全く変わってきている。東北は隣という感覚だし、東北の人たちもいずれ札幌は隣だという感覚にすぐなると思います」
 
「北海道で3000億円くらいの食品スーパーマーケットのコアがあると、地域のマーケットシェアで30%近くが可能なようなスケールになる。これによって仕入れの原価だとか物流、経営上のいろんな要素が有利に働く。さあ道内で次はどこだ、と言っても道内では食品スーパーの分野だけではダメ。いろいろと模索している」
 
「共同仕入れ会社CGCが全国8地域にあって、私が社長をやっている北海道CGCは扱い高で1000億円を超えた。アークスグループで扱いの9割を占めている。東北には東北CGCがあってユニバースの三浦紘一社長が役員として頑張っているが、この東北も3000億円のうち1000億をユニバースがやっているから3分の1、ジョイスも東北CGCのメンバーで約400億円の売り上げですから東北CGCも半分くらいは我々のグループになった。東北3県のうち青森、秋田、岩手で競合しているところもあるが競合自体は経営のデメリットにはならない」
 
「青森県はユニバースが30%のシェア持っている。岩手もジョイスと一緒になると30%近いシェアになる。秋田はまだそこまでいっていない。今度は宮城にも店舗を出店するので東北6県のうち4県のエリアにアークスグループの店舗が展開していくことになる」
 
「次はどこだ、ということだが、何度もいうが統合を繰り返して大きくしていって覇権主義のようなシェアを強引に取っていくことは全然考えていない。零細企業から始まって幾多の困難を乗り越えて現在の形態を保持しているが、この良さを寄せ集めて、何とか資本主義の単純な資本力、販売力、バイイングパワーというような競争だけではないやり方できっちりと新しいグループ作りを当面は東日本のフィールドで確立したいと思っている」
 
「今、(業績が)良いところでもかなり短期間で状況が一変するような厳しい状況なので、一緒にやりたいという仲間が沢山手を挙げている。何度も言うが、顰蹙を買うのは分かっているが救済型ではとてもやれない。業界の中でも勝ち組と言われているある程度力を持った人たちと一緒に取り組みながら、新しい販売形態と経営のひとつのフォーマットを作り上げつつある」
 
「ひとつの革命より1000の改善の方が我々にとっては将来を確約するような経営基盤になる訳ですから、そんな覚悟でやっている」
 
 横山社長の会見後半は次回に紹介する。

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