コープさっぽろ(本部・札幌市西区)の宅配トドック事業は、高い利益率を保ちコープさっぽろの収益を支えている基盤だ。全道全域に張り巡らせた物流網は、協同購入事業を始めた1981年以来、地道に積み上げてきた投資やノウハウの集大成とも言えるもので他社の追随を許さない。大見英明理事長に聞くシリーズ最終回は、宅配トドック事業に絞った。(写真は、大見英明理事長)

「2019年の宅配トドック事業は102%と順調に伸びたが、伸び率がやや弱くなってきた。その理由はやはり1人世帯が増えているからではないか。1人世帯を十分にフォローしきれていない。週1回お届けする事業なので家族のいる世帯が多く利用していて、1人世帯になると購入量が減るため止める組合員もいる。人口構成の変化に対応して宅配事業も1人世帯をどうフォローするかを考えなければ今後の成長は難しくなってきた」
 
「宅配トドックでは組合員1世帯当たり1回に13~15点の購買点数になっている。ネット通販やアマゾンでは必要なものしか買わないから、これだけの購買点数になることはほぼないだろう。ネットスーパーもすぐに持ってきてほしいというニーズが今のところ多く、購買点数はそれほど多くないはずだ」

「コープさっぽろの宅配トドックは、週に1回のお届けで1週間前に受注するシステム。このため商品ロスはほとんどない。通常の食品スーパーではロスを防ぐため5~6%値引きしたりする。宅配事業はロスがほとんどないため、その分利益率が一定程度担保できる仕組みになっている」

「宅配事業では3月からWEB発注を本格稼働させる。スマートフォンに対応でき、発注時間の短縮に繋がる。また、カタログ事業を一昨年から強化して取扱品目を増やすようにした。カタログを強化したのは、どんな地方で暮らしていても総合スーパーとドラッグストアの品揃えの95%は網羅できるようにするため。地方では商店の閉店などで買い物をするのが難しくなってくるので、カタログを強化して2万アイテムの取り扱いにチャレンジした。しかしその伸び率が鈍い」

「例えば、お酒のカタログではカタログの注文だけで年間10億円を超えるまでになっている。『お酒』、『食品』、『ビューティ』、『暮らし』の4つのカタログを季刊で発行しているが、コンテンツを変えて訴求力をより向上させていくことで注文を増やしていきたい」

「『ビューティトドック』のカタログも年初から変えた。その途端、スタート時は800万円の注文が一気に1800万円に増えた。コープさっぽろはどちらかというと高齢者向け、シニア向けのイメージがあるがそれをどう壊していくか。『ビューティトドック』のように既存イメージを払拭していくことが今後の成長の鍵になると考えている」

「全道の宅配ネットワークができており、週1回定期配送で最もローコストな物流網になっている。イオンが英オカドと組んでネットスーパーを強化するという報道があるが、北海道にも専用センターを作るのだろうか。仮に作ったとして礼文島まで運ぶことが可能なのか。大都市圏では対応できても広域分散型の北海道ではなかなか大変ではないだろうか」

「宅配トドックでここまで品揃えできていることを組合員にきちんとアピールしていくことも必要。組合員は北海道のどの地域に住んでいても必要な品物の95%は賄えるので、残り5%のロングテール(ネットの物品販売で販売機会の少ない商品のアイテム数を増やし、顧客の総数を増やすことで総体の売り上げを大きくすること)がアマゾンの(スーパー分野での)参入余地ではないかと現状では考えている」(終わり)
(写真は、宅配トドックのカタログ「ビューティトドック」)


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